本研究では、悪性腫瘍に対する組織破壊性を向上させるため、凍結手術と温熱療法を併用実施可能な凍結加温手術装置を開発し、本手術法の組織破壊効果を調べることを目的とした。 平成26年度では、電気的に温度制御が可能なペルチェ素子を用いて手術用プローブを作製した。スターリングクーラ(SC)を用いて作製した冷媒循環装置とプローブをチューブで接続することで凍結加温手術装置を開発した。無負荷条件による冷媒にエタノールを用いた手術装置の性能評価実験では、プローブの最低温度は-45.3℃に達したものの経時的な温度上昇が観測された。そこで断熱材を冷媒循環回路に装着した結果、温度上昇は緩やかになったが、温度上昇は継続したことから冷媒冷却能力及び断熱能力の向上が必要であることが明らかとなった。 そこで、平成27年度ではプローブの最低温度の低下と冷媒の温度上昇を抑制する目的で、冷媒循環回路内に1台のSCを追加で設置し、また手術装置に断熱材を更に装着した。改良型の凍結手術装置の評価を平成26年度と同様に行った結果、プローブ温度は最低で-69.4℃まで達し、その後の経時的な温度上昇は毎分0.1℃程度となりほぼ抑制することができた。他方、冷凍と加温を繰り返すサイクル試験において、プローブ温度が設定温度である-40℃と+45℃に自動的に3回繰返し制御された結果からサイクル法による凍結加温手術の実行性が示された。 最後に生体組織に対する破壊効果を動物実験にて評価した。評価実験では、マウスの生体肝組織に対して凍結加温手術を施行し、手術後に摘出した組織を病理学的手法を用いて観察した結果、細胞核の消失や濃縮、染色性の低下が観察され、壊死したことが確認できた。以上の結果より、本研究で作製した冷媒循環型の凍結加温手術装置は手術時の自動温度制御が可能で、組織破壊効果も有することが明らかとなった。
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