研究課題/領域番号 |
26820070
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
道辻 洋平 茨城大学, 工学部, 准教授 (90376856)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 実験による検証 / 装置の制作 |
研究実績の概要 |
平成26年度における当初計画では、1/10スケールの傾斜軸独立回転車輪ユニットの設計・制作をおこない軌条輪試験による走行安定性の検証実験を行う予定であった。研究予算を活用し、軌条輪試験のモータ制御・センサ計測用のDSPを新規購入し、所有していた軌条輪実験装置を安定的に可動させる準備が完了した。また、当初の研究計画にそって車輪ユニットを制作し、軌条輪試験を実施した結果、従来方式の輪軸と比較して数値計算どおりの高い走行安定性を有していることを実験により確認した。 当初想定していた問題として、軌条輪に独立回転車輪を設置した際のアンバランス等の発生を考えていたが、このような問題も発生せず走行実験を実施し、一定の成果を得ることができた。ここで得られた内容については、平成27年11月に開催される鉄道高速化国際シンポジウムSTECH2015へエントリーを済ませており論文執筆の準備を進めているところである。同時に日本機械学会英文ジャーナルへの投稿準備も進めている。 一方、様々な支持剛性の組み合わせに対する、走行安定性の向上効果については、数値解析により詳細検討はおこなったものの、走行実験による検証は未達成である。この理由は装置設備の購入予算が、平成26年度分は当初予定より削減されたためである。しかしながら、この項目については平成27年度に持ち越して実施する予定である。 予算の都合により一部の実験は未達成であるが、代わりに数値解析による様々な車輪パラメータによる影響を分析した。分析結果から、逆踏面形状に限らず自己操舵性を発揮でき、かつ走行安定性に優れる傾斜軸EEF台車という新しい提案が具体化できた。この提案については数値解析のみであっても有益な成果が得られており、平成27年12月に開催される日本機械学会交通・物流部門講演会において発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って概ね予定通り研究を進めることができた。一方で、平成26年度配分予算の関係で、当初購入を予定していた複数の車輪支持機構の制作が実施できなかった。この項目については平成27年度配分予算を活用し、部品の加工について、外注ではなく自作をすることにより経費を抑え、制作を進める予定である。このように、複数の実験条件による走行実験という観点で、未実施の実験条件があるものの、提案する逆踏面傾斜軸独立回転車輪ユニットの制作は完了し、その基本的な優位性は走行実験によって示されている。この点は大きな成果と考える。また、実験が停滞した期間においては、マルチボディ・ダイナミクスにもとづく車両運動解析による検討を深度化することで進捗の遅れを補完した。数値解析を主体とした検討を深度化したことにより、当初考えていた逆踏面式傾斜軸独立回転車輪と同等の曲線通過性能を有しながら、既存の軌道や分岐器通過が可能な傾斜軸EEF台車という新しい着想を得ることができた。このように、理論や数値解析の面において、当初予定していた以上の成果を得ることができた。 以上をまとめると、実験における遅れが若干あるものの、理論解析では大きな進展があり、総合的に進捗状況を評価すると「おおむね順調に進展している」ものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って概ね予定通り研究を進めることができたが、平成26年度配分予算の関係で、当初購入を予定していた複数の車輪支持機構の制作が遅れており、この項目については平成27年度配分予算を活用し検討を進める予定である。装置の制作については、材料を購入し、機械加工については大学設備を活用することでコストを抑えていく。 当初の予定では平成27年度は、傾斜軸独立回転車輪に適合した車輪踏面設計を検討項目に加えていた。平成26年度における研究成果として、逆踏面車輪を用いない、傾斜軸EEF台車という着想を新たに得ることができたため、逆踏面車輪および傾斜軸EEF台車用の車輪の両方に対して、摩耗や走行安全性の観点から適した車輪踏面設計を考えていく。このようなことから、新しい検討項目を加えつつ、基本的には当初の予定通りの成果を達成すべく、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際の消費税等により80円の繰越が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
小額の繰越であるため、当初の計画に対して変更なく次年度に繰り越す。
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