本申請では,研究期間内にダブルステータ型アキシャル磁気浮上モータの開発と,開発したモータを用いた遠心型血液ポンプの開発を目的としている。 平成27年度までに,提案する磁気浮上モータの開発を行い,開発した磁気浮上モータが人工心臓に適用可能な性能を有することを明らかにした。そして,開発した磁気浮上モータを元に左心室補助用の小型ポンプを開発し,左心室補助に適用可能な性能(水を用いた実験において,揚程100 mmHg,流量4.5 L/min)を有することを明らかにした。平成28年度は,ダブルステータ型アキシャル磁気浮上モータの高性能化と,両心室補助人工心臓ポンプの開発に取り組んだ。 まず,磁気浮上モータの高性能化を目的に,ロータ永久磁石の極数とステータ突極の極数を変更した磁気浮上モータを設計・製作した。これにより駆動アンプの個数を16個から10個に減少することができた。また,浮上回転制御時の安定性を向上させることができた。 さらに,開発した磁気浮上モータをベースに,ロータの上下に設置する左心用・右心用のインペラとインレット・アウトレットを含むケーシング全体の設計と製作を行った。そして,インペラとケーシングを磁気浮上モータに組み込み,小型ポンプを製作した。そして,製作した磁気浮上ポンプが両心補助可能な性能を有しているかを確認するために流水実験を行った。実験は右心側のポンプを完全に開放した状態で,左心側のポンプ性能を評価した。結果,最大流量は8.3 L/min,最大揚程は170 mmHgを得た。また,揚程 100 mmHgのとき,流量 4.0 L/min(回転数1800 r/min)を得た。これにより,製作した磁気浮上ポンプが両心室補助可能なポンプ性能を有することを明らかにした。
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