研究課題/領域番号 |
26820072
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤原 大悟 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60604642)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 飛行制御 / ヘリコプタ / 高機動飛行 / 軌道計画・創発 |
研究実績の概要 |
当年度は、小型ヘリの高機動飛行と軌道創発を行うに当たり必要となる基礎的検討を中心に研究を行った。 まず、軌道創発システムの基盤をなすハイブリッド機体運動モデルの作成を行った。まず、モデルパラメータの取得のため対象機体を用いた地上試験と飛行試験を行った。地上試験は、6軸力覚センサを用いた台上試験装置製作し、小型ヘリのロータを回転させた状態で操縦入力を入力しその際の6分力を取得する試験を実施した。飛行試験では、機体および地上モニタのソフトウェアの製作を行い、実飛行状態での入出力動特性データを取得した。なお、当年度および次年度に実施する飛行試験のための制御用ハードウェア構築もこれと並行して実施した。次に、非線形性の強い胴体の運動方程式・重力・姿勢運動計算部を非線形数式で、それ以外の空力計算部などを線形モデルから抽出した線形数式で表し、これらを結合するハイブリッドモデルを作成した。全てを非線形数式で表現するモデルに比べて動特性の精度をあまり損なわずに計算負荷を少なくでき、軌道創発という負荷の高い計算を行う場合に有用なモデルが出来たと言える。 次に、軌道創発アルゴリズムの検討を行った。モデル作成検討において機体運動特性の不安定さが目立ったので、軌道創発アルゴリズムを下位のインナーループ制御則と上位のGA則の組み合わせとする方向で検討を開始し、先に下位インナーループ制御の検討を行った。これは、加速度ベクトル生成・修正則、角速度制御則、姿勢制御則、加速度ノルム制御則などから構成する機体加速度制御則の形で構成することとし、各部の構造・ゲインの設計を実施した。シミュレーション計算器上で、ハイブリッドモデルを用いた機体運動シミュレーション環境を構築し、シミュレーションにて良好な性能を確認した。GA利用部については、上位則として次年度検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は全ての軌道生成・創発をGAのみで行う予定であったが、ハイブリッドモデルを検討する過程で機体の不安定特性が目立ったことを考慮し、軌道創発アルゴリズムをインナーループ制御則を組み込んだ形にする方向へ方針転換し、インナーループの構築を優先したため、GAの検討時期が後ろ倒しとなった。それに加え、飛行試験中に機体が地面と衝突する事象が発生し、機体と搭載ハードウェアの修繕が必要となった。さらに、修繕後の機体による飛行試験で共振とみられる機体の激しい振動が発生して、空中分解の危険から飛行試験続行が困難となり、振動の原因究明と対策に追われたことで、全体スケジュールに影響が発生した。なお、ハイブリッドモデル用機体パラメータ取得のための飛行試験は最小限実施できたため、データ取得試験を一部残しているものの、モデル作成作業への影響は小さい。
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今後の研究の推進方策 |
GAによる軌道創発アルゴリズムについては、基盤となるハイブリッドモデルとインナーループ制御則の検討がほぼ済んでいることから、早急に検討を開始する。 また、機体の振動の原因究明・対策は当年度末時点で未完了となっており、次年度に予定されている作業にも影響するため、機体の専門家を交えて、振動発生源および共振メカニズムの特定、対策の決定、機体改修あるいは新製、確認試験の手順で早急に実施する。 これ以外については、当初の平成27年度計画に沿った検討事項を実施していく。なお、機体振動対策の状況次第でスケジュールへさらなる影響が出る可能性は残っているため、このことを常に念頭に置きながら作業を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
飛行試験の中断により飛行試験回数が想定よりも少なくなり、飛行試験実施や機体消耗品購入に確保していた経費に余りが生じたことが、次年度使用額発生の主たる要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
当年度に予定していた飛行試験の一部を次年度へ振り替えるため、こちらに次年度使用額を充てることになる予定である。
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