本研究課題では,非ガウス性不規則励振を受ける非線形系の信頼性解析手法を開発することを目的としており,最終年度では,以下の3点の内容を実施した. 1.応答分布推定手法の開発:非ガウス性不規則励振を受ける系の応答分布を推定するため,平成26年度には,Gaussian Sum approximationを用いた手法を開発したが,励振の非ガウス性が強い時,十分な精度が得られないことを確認した.そのため,平成27年度では,より多様な非ガウス性を有する励振を受ける系の応答分布を正確に求めるため,最小クロスエントロピー法を用いて推定する手法を提案した.この手法では,二峰性や強い非対称性を有する励振の場合にも適用可能である. 2.信頼度関数の導出:変位応答と速度応答が独立であるという近似を置くことで,前年度に開発した等価非ガウス励振化法によって得られた応答の4次までのモーメントをもとに,系の信頼度関数を求める方法を提案した.計算例を通して,広範な帯域幅及び様々な歪度・尖度をもつ非ガウス性励振を受けるの線形系の信頼度関数を正確に求めることができることを示した. 3.励振の分布やパワースペクトル特性の変化が系の信頼性に与える影響の考察:2.の研究を通して得られた計算結果をもとに,励振の歪度や尖度また帯域幅が系の信頼度関数に与える影響を調べた.励振の非ガウス性の影響は特に励振帯域幅が狭い時に顕著になり,ガウス性励振の場合に比べて,系の信頼性が大きく低下することを確認した. 平成26年度および上記の平成27年度の実施内容を通して,工学分野に見られる種々の非ガウス性励振を受ける系に広く適用可能な応答・信頼性解析手法を提案し,そのような系の応答・信頼性に関する多様な新規的知見を得た.平成27年度では,論文投稿や学会・国際会議での発表により,以上の研究成果の発信を積極的に行った.
|