現在,各分野で節電対策が求められているが,機械システムに対しても省エネルギー化の要求が厳しくなっている.本研究では,ロボットのようなマルチボディシステムに適用可能な「受動ストレージ要素を利用した省エネルギー駆動法」を提案した.すなわち,関節部にばねを付加し,運動中に蓄えられるポテンシャルエネルギーを有効に利用することによって,消費エネルギーを大幅に低減する方法である.本研究では,このアイデアの理論的裏付けを行いその合理的な設計法を確立すること,および実験装置を製作して提案手法の有用性を実証すること,を目的とした. 平成26年度は,水平多関節型マニピュレータを対象とし,最大の省エネルギー効果が得られる条件を最適制御理論に基づいて解析した.そして,ばねと動作軌道の同時最適設計法を確立した.さらに,提案した省エネルギー駆動法に基づく水平型2関節ロボットを試作した.提案手法は,自由振動を利用する方法であり,関節部にモータを設置することはできないため,リンクの適当な位置にリアクションホイールを取り付け,そこからトルクを印加することにした.また,2つの直動ばねと特殊なスプリング受けを用いて関節部に剛性を付加する機構を考案した.実験により,大きな省エネルギー効果が得られることを確認した.しかし,軌道追従誤差が若干大きいという課題を残した. そこで,平成27年度は,まず軌道追従性の向上を目的とし,提案した新構造のマニピュレータに適用可能な適応追従制御系を設計した.実験により軌道追従誤差を大幅に低減できることを確認した.さらに,ばねをストレージとしてだけでなく,重力バランサーとしても利用することにより,提案手法を垂直型にも拡張できることを示した.そして,簡単なモックアップを製作して,理論の実現可能性を確認した.現在,垂直型の実験装置を製作しており,今後詳細な実証実験を行っていく予定である.
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