ローラ形の搬送装置を対象とした本研究において,従来のウォームギヤなどを用いた接触を有する伝達機構に替わり,磁気歯車を用いたことにより非接触式の搬送装置にて高速かつ高精度な位置決めを目指す.昨年度までに3組(計6個)の磁気歯車を配置した約425×253×115mmの実験装置を設計・製作した.その装置において磁気力の大きさに影響を及ぼす歯車間のギャップは0.5mmとし位置決め実験を行い,その特性を測定した.しかし,3組の磁気歯車対の特性が相互に影響を及ぼすために,非常に複雑な挙動を示した.そのため最終年度は,1組の磁気歯車対について実験を行った.実験内容はオープンループ制御によるステップ応答試験,正弦波応答試験,周波数応答試験,磁気歯車間の距離を変化させたときのPID制御におけるステップ応答,ステップ幅を9°として1周回転させたときの挙動測定,正弦波動作による挙動測定を行った.その結果,主にオープンループ制御による正弦波応答試験では,定格トルクの10%をトルク指令とし正弦波入力をした結果,磁石間の吸引・反発力の影響により位置ドリフトが生じた.また,それと同時に駆動側のエンコーダと従動側のエンコーダとの偏差もドリフトする傾向にあり,変位角の位置に因って偏差の生じる大きさが異なることが分かった.また,回転角90°のような大きな目標回転角とすると,磁気歯車間が低剛性であるため,被動歯車が追従しきれずに大きな偏差を生じた.PID制御時の各ステップ応答では,磁気歯車間の距離を0.5mmから2.5mmまで0.5mmずつ変化させた.その結果,位置決め時においてばらつき誤差とかたより誤差を検討したところ,磁気歯車間距離が0.5mmと2.5mmの結果が最も良くなった.距離が近いと磁気力による見かけの剛性が高くなり,距離が遠いと従動側歯車の磁気力が外乱としての作用が弱まったためと推察される.
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