本申請の研究期間2年間で膝関節靭帯再建術及び人工靭帯を評価するための装置開発した.まず,万能材料試験機(島津製作所製)と膝関節固定用治具からなる実験装置の設計・制作した.開発した治具にはベアリングとリニアベアリングが内蔵され,膝運動再現に必要な6自由度の内5自由度を任意に開放と固定することが可能である.この治具と垂直変位を与える万能材料試験機と組合せることにより,膝運動の全自由度(3並進自由度,3回転自由度)が制御可能である.さらに,万能材料試験機の先端と治具間には力覚センサ(株式会社ワコーテック製)を介し荷重を測定可能とした.また,治具には小型慣性センサ(株式会社ATR-Promotions製)が設置され,位置と姿勢を計測可能とした. 次に,実験ではヒト膝関節の代替モデルとして人工靭帯再建術を再現した医療用樹脂膝関節モデルと膝関節靭帯再建術状態(単一束,二重束)を再現したブタ後膝モデルを用いた.代替モデルは北海道大学付属病院の整形外科の協力・指導の基で作成した.これらのモデルを用いて異なる膝関節靭帯再建術及び異なる靭帯材料が膝関節可動範囲と支持力に及ぼす影響を測定した.樹脂膝関節モデルには骨孔を開け,そこに人工靭帯を通して単一束・二重束の再建術を再現した.人工靭帯は変位に対して支持力は線形的に変化し,生体材料に見られる支持力の弛緩は現れなかった.また,骨孔の位置及び靭帯を固定する際のプレテンションによって支持力の差異が確認された. 膝十字靭帯を構成する前十字靭帯と後十字靭帯には異なる機能を備えた線維束が存在する.そこで,本研究では特定の線維束欠損状態を膝代替モデルで再現し,膝関節靭帯再建術評価装置に設置して実験を実施することで,特定の線維束が膝の可動範囲と支持力に及ぼす影響の解明を試みた.結果,靭帯束の状態により5自由度の可動範囲及び6軸の支持力に差異が確認された.
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