研究課題/領域番号 |
26820082
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
鈴木 陽介 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20582331)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 非接触センシング / 近接センサ / 未知物体把持 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,マテリアルハンドリングにおける作業制度と作業速度を向上させる仕組みとして,近接センサ素子による条件反射的アクティブセンシング機能を備えたロボットハンドの研究開発を行う.多指ロボットハンド手掌部と指部の全体を近接センサ素子実装面とし,各指の旋回・屈曲動作によって素子配置をアクティブに変更可能とする.把持対象物の形状に合わせて最適なセンシング領域を物体に触れる前から“触れているかのような”手探り動作を可能とすることで,多種多様な形状の製品を扱うマテリアルハンドリングの作業速度を向上させることができると期待される.平成26年度の研究では,未知形状物体の把持に対する戦略として,あらかじめ指を閉じた状態で物体への接近を行い,指部の近接センサ情報を利用して,物体の輪郭から10mm程度離れた位置をなぞるようにして指を移動させる手法を提案した.本研究室ではこれを形状適応把持と呼んでいる.通常の把持戦略では,事前に推定された物体の大きさに合わせて指を開いて物体に接近させるのに対して,形状適応把持では,物体の大きさが未知であっても,ロボットハンド指先のセンサフィードバックによって検出した物体面との平行および一定距離を維持することで,様々なサイズの対象物に対応できる.また,シミュレーションに基づく検討から,形状適応把持の距離のフィードバック目標値を動作実行中に可変とする方法を提案することで,円柱,角柱を含む多様な形状の対象物に対して提案手法が適用できることを確認した.本手法により,ごく簡易的な視覚センサ情報処理を用いて把持目標物体の位置さえ把握できれば,その位置にロボットハンドを近づけるだけで形状に寄らず,物体の形状に合わせた適切な把持姿勢での把持が可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の現時点の達成度としては,おおむね順調に進展している.目標とする,ロボットハンド手掌部および指部に搭載した近接センサを用いた非接触での手探り動作の動作例として,各時刻の近接センサ情報とハンド姿勢を併せて評価することによる反射応答的な把持手法である,形状適応把持を提案できたためである.しかしながら,網羅的な条件でのシミュレーションから,把持アプローチ時のロボットハンドの動作生成に関する一般的な手法を提案するに至るには,さらに多くのシミュレーション解析を実行することが必要だと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の研究計画としては,ロボットハンドに搭載された近接センサが物体把持の過程での,網羅的な条件でのシミュレーションを第一に実行する.把持対象物の形状(曲率,サイズ,凹凸など)や表面性状(反射率,鏡面反射特性,色など)を変更させた条件の下で,ロボットハンドがアプローチする際の対象物との位置・姿勢とセンサ出力との関係を調査する.これにより,(例えば事前の視覚センサの情報処理において生じた推定誤差などにより)ロボットハンドのアプローチ位置・姿勢が適切でなかった場合に特徴的に生じるセンサ出力の変化の傾向を確認できれば,人が触覚によって手探りで行うように,ロボットハンドが対象物を直接検出した情報に基づいたロバストな把持戦略が提案できるはずである.これまでの研究で提案した形状適応把持は,そうして提案された把持戦略のひとつであるが,視覚による推定誤差の許容範囲や,多様な対象物の形状・表面性状に対する適用範囲についての評価が十分ではないため,これを確認する必要がある.また,把持動作の過程での時系列の近接センサ出力情報を基にした把持戦略についても検討を深める計画である.現状,近接センサフィードバックは主として各時刻でのセンサ出力を利用した反射応答的な手法で行われているが,ロボットハンドの応答性に対してセンサの応答性が十分に高い場合には,連続時間でのセンサ情報の変化を利用する手法が有効と考えられるためである.なお,本研究により得られた成果を,順次学術誌等で発表することも予定している.
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