本研究では移動体上での発電機として利用される永久磁石式同期発電機(PM発電機)向けの高効率整流システムを提案し,実証を行った。提案するシステムの実証を行うために,ハイブリッド車等で用いられている発電機と同程度の回転数となる定格回転数6000min-1,2kVA,定格電圧400VのPM発電機を製作して実験を行った。 製作したPM発電機に対応した設計で直列補償装置GCSCについても製作した。発電機の定格周波数は400Hzであり,GCSCに用いるコンデンサの静電容量は各相10uFとなった。直列補償装置は比較的小型となることが確認できた。 この発電機および直列補償装置を用いた実験を行った。比較は,ダイオード整流回路,ダイオード整流回路に上記GCSCを組み合わせたもの,PWMコンバータの3システムを対象に行った。ダイオード整流回路およびPWMコンバータについても製作を行った。PWMコンバータにはスイッチングデバイスとしてIGBTを用い,スイッチング周波数は10kHzに設定した。 発電機の無効電力制御の効果を確認するため,3システムにおける発電機電流・電圧・電力特性と,発電機効率の測定を行った。この点においてGCSCを用いた回路はPWMコンバータとほぼ同等の性能を持ち,ダイオード整流回路よりも優れた特性を持つことが確認できた。一方,電力変換器の効率についても3システム間で比較を行った。PWMコンバータの効率は97%台後半であったのに対し,GCSCを用いたシステムは99%台の効率を達成できた。GCSCの損失が3相合計で5W程度と,部分電力変換の特徴を十分に活かした適切な設計によって,きわめて高効率な回路となったことによる。 以上より,PWMコンバータ同様に発電機の性能を十分に取り出せ,また自身の変換効率がダイオード整流回路並みに高いという,提案システムの利点について実証することができた。
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