研究課題/領域番号 |
26820098
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
井上 征則 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50580148)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気機器工学 / モデル化 / エネルギー効率化 / 永久磁石同期モータ |
研究実績の概要 |
これまでは回転子に同期したd-q座標上でモータの運転特性や制御法が議論されてきたため、電機子鎖交磁束に同期したM-T座標に注目し、高効率運転のための最大トルク/電流制御について特性の考察を進めた。 まず、有限要素法による磁界解析ソフトウェアを用いて永久磁石同期モータの電機子鎖交磁束と電機子電流の関係を数値データとして得た。その結果、磁気飽和が生じる運転状態においても新しい数式モデルが特性をよく表現できており、実機においても数式モデルが適用できる可能性があることを明らかにできた。さらに表面磁石同期モータでは数式モデルを簡略化できることが分かった。マグネットトルクとリラクタンストルクを利用できる埋込磁石同期モータには新しい数式モデルが適用できることを数値計算で確認していたが、マグネットトルクのみ利用する表面磁石同期モータには適用困難であった。数式モデルのパラメータ設定法を再検討した結果、インダクタンスに相当する1つのパラメータについて極限をとることによりモデルの簡略化を実現できた。これにより、実際のモータ駆動システムに適用する際に制御法を簡潔に構築できる可能性が出てきた。ただし、同期リラクタンスモータでは磁気飽和が大きくなる運転状態で数式モデルと一致しない場合があり、今後、数式モデルの改善が必要である。現時点では対策として、モータ定格電流を閾値として数式モデルのパラメータを変更する方法が考えられる。 また、新しい数式モデルを用いたモータ駆動システムの制御法も構築し、埋込磁石同期モータと同期リラクタンスモータの実機において、最大トルク/電流制御が実現できることを明らかにした。 磁気飽和評価用モータ導入については、有限要素法による磁界解析において数式モデルの適用可能性が判断できたことから、モータ構造の概形は決定できた。現在、試作依頼先の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では理想的なモータモデルに基づく数値計算により最大トルク/電流となるモータ運転特性について評価を進める予定であったが、有限要素法による磁界解析を用いて運転特性の評価を行うことができたため、磁気飽和評価用モータ導入のためのモータ構造検討も同時に実施することができた。平成26年度中には試作モータ発注までは実施できなかったものの、実機に近い磁気飽和を考慮した運転特性の考察を早い段階で実施できたことにより、数式モデルの簡略化なども成果として得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
予定している磁気飽和評価用モータの導入については、有限要素解析で用いたモータ構造とほぼ同等とする予定であるが、交付決定された研究費が応募時の予算額から減額されているため、試作モータ台数を最少限にとどめる予定にしている。数式モデルの評価としては、表面磁石同期モータ、埋込磁石同期モータ、同期リラクタンスモータ、永久磁石補助形同期リラクタンスモータの4台を試作すべきであるが、予算的に厳しいようであれば2台まで減らす必要があり、どの種類を選ぶかについて検討を進める。交付申請時点では埋込磁石同期モータと同期リラクタンスモータを選ぶ予定であったが、平成26年度で得られた表面磁石同期モータに適した簡略化した数式モデルの妥当性について評価したい面もあり、部品の共通化など工夫ができないかどうか検討を進めたい。 モータ試作が完了次第、計画通りM-T座標上でのパラメータ測定を実施する。これまで、パラメータ測定には電圧と電流の測定に加えて電機子鎖交磁束の推定が必要であり、その推定誤差を考慮する必要があったため、電圧と電流のみの測定でパラメータを算出できる方法を開発予定である。 新しい数式モデルによるモータ駆動システムの制御法としては、表面磁石同期モータは未検証であるため、試作モータを用いて制御法の改良を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
応募時には平成26年度にモータ試験装置を購入する予定にしていたが、交付決定金額が減額されていたことからモータ試験装置の導入を見送り、平成27年度に導入予定の磁気飽和特性評価用モータに費用を充てるため。モータ試験装置の使い勝手は劣るが他の研究で使用しているものを一時的に借用し、足りない部品(DAボード等)を購入した。新しい数式モデル評価のため、モータ試作費用を優先することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に交付される金額と26年度繰り越し分を合算することにより、磁気飽和特性評価用モータ一式の購入と研究成果発表のための国際会議参加旅費に充てることができ、平成27年度については応募時の計画通りの使用額になる。
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