今年度は,前年度の成果として開発された部分要素等価回路と熱の連成解析に基づいて,実規模3T-MRIへの応用を目指した高電流密度(500 A/mm2:従来設計の5倍)・高熱的安定性(常伝導転移事故が発生しても熱暴走が発生しない)・高励磁特性(励磁遅れが数十秒)メーター級REBCOパンケーキコイルの設計および検討を行った。結果として,銅安定化層が10μm/side以下のREBCO超伝導テープで巻かれた,層間接触抵抗率が7000μΩ・cm2の無絶縁パンケーキコイルでは常伝導転移発生時に常伝導転移部の拡大・伝搬が発生しないことが明らかにされた。また,上記に設計されて無絶縁パンケーキコイルで構成された3 T高温超電導MRIが同性能の従来型MRIより,およそ7割の体積を削減することができるとわかった。上記の研究成果は,国際会議1st Asia ICMC and CSSJ 50th Anniversary Conferenceにて招聘講演として発表された。 また,REBCO高温超電導パンケーキコイルの高信頼化を達成するための無絶縁パンケーキコイル保護技術の開発に関して,簡易回路解析により研究を行った。常電導転移が検出された直後の無絶縁パンケーキコイル対して,適切な外部抵抗を用いてコイル遮断時の磁場減衰時定数を制御しながら,コイルに蓄える電磁的エネルギーを分担できることが検証実験と解析の両面で確認された。上記の研究成果は,国際会議International Conference on Magnet Technology 24にで発表し、国際誌IEEE Transactions on Applied Superconductivityへ投稿して、査読審査後採択され2016年6月に掲載された。
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