研究課題/領域番号 |
26820106
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研究機関 | 津山工業高等専門学校 |
研究代表者 |
桶 真一郎 津山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20362329)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 集光式太陽光発電システム / パワーコンディショナ / 定電圧制御 / フィールド試験 / I-Vカーブ / 日射変動 |
研究実績の概要 |
平成27年度には,集光式太陽光発電(CPV)システム用パワーコンディショナ(PCS)の開発に向けて,CPVシステムを定電圧制御および時間遅れを考慮したMPPT制御で運転した場合のそれぞれの発電電力および発電電力損失を比較した。また,それぞれの制御方式の発電電力と1日の日射変動との関係を調査し,日射変動がそれぞれの発電電力に及ぼす影響について検討した。本研究で使用したCPVシステムは集光倍率820倍のフレネルレンズを備えており,受講面積は1.0m2,定格出力は280Wである。太陽追尾装置は,方位角軸および仰角軸からなる2軸追尾装置である。検討に用いたCPVシステムのデータは,2013年12月から岡山県津山市で実施しているフィールド試験で得られたものである。 時間遅れがなく常に最適動作点で動作する制御(理想MPPT制御)に比べて,実際のMPPT制御および定電圧制御の発電電力は必ず小さくなる。快晴日においては,どちらの制御方式であっても理想MPPT制御とほとんど差はなかった。これは,快晴日は1日を通して最適動作点電圧があまり変動しないためである。一方で,日射の変動が激しい日においては,動作電圧の追従に時間遅れがあるMPPT制御はその発電電力が快晴日に比べて大きく低下したが,常に一定の電圧で運転する定電圧制御の場合は快晴日とあまり違いがなかった。 日射変動の影響を定量的に明らかにするため,時間窓を1000秒(16分40秒)として時間窓内の直達日射の最大値と最小値の差を求め,その1日平均値と日積算発電量との関係を検討した。その結果,MPPT制御の場合は日射変動が大きくなると発電電力は線形に低下することがわかった。一方で,定電圧制御の場合は日射変動と発電電力とはあまり関係がなく,日射変動の影響は大きくないということがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度においては定積的な検討に留まっていたMPPT動作速度と発電量の低下との関係,日射変動と発電量の低下との関係について,平成27年度には時間窓を用いるなどしてその性質を定量的に明らかにすることができた。このことは,平成28年度に実施する定電圧制御を備えたパワーコンディショナ回路の試作および評価において重要となるポイントをクリアしたことを意味する。また,太陽電池モジュールに発生する結露の様子を調べるために設置した内部温度計測システムも順調に稼働しており,有用なデータが得られている。 以上のことから,ほぼ予定通り順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのシミュレーション計算によりCPVシステムを定電圧制御することによって生じるメリット・デメリットは明らかになったので,平成28年度には定電圧制御を実装したパワーコンディショナ回路を試作し,実際の太陽電池モジュールに接続してその動作特性をフィールドで明らかにする。また,太陽電池モジュールに生じる結露の影響について,平成27年度に計測した/およびこれから計測・蓄積する内部温湿度データを用いてできるだけ詳細に検討する。なお,CPVシステムの発電電力を自動的に記録するシステムの動作が不安定であるため,その整備を進めることも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を補助しその研究成果を学会発表等で発表する指導学生の旅費および学会参加費が予想より少なかったことから,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
現在動作が不安定となっている発電量計測装置のメンテナンスのために使用する予定である。
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