研究実績の概要 |
本研究の目的は,次世代の超高密度磁気記録媒体用の,記録層の材料開発にある.具体的には熱アシスト型記録方式に対応した巨大な一軸結晶磁気異方性を有するCoPtRhグラニュラ薄膜の実現を目指す.申請者が見出した積層欠陥の定量評価法を利用して得た材料知見「価電子則」を基にCoPt基合金結晶粒の結晶構造の一軸性を向上させる材料組成および成膜プロセスを確立する. 申請研究では, 熱アシスト型磁気記録方式に対応する媒体のため,高Kuかつ低Tcを実現するCoPt合金薄膜の作製を目指す.具体的には,まずCoPt合金薄膜中に形成される積層欠陥の低減するプロセスについて確立し,更にPt poor原子層とPt rich原子層との多層原子層構造である原子層組成変調構造を実現する基板加熱条件について検討し,高Ku化を図る.最終的には探索した合金材料および作製プロセスを実際の磁性結晶粒-酸化物グラニュラ薄膜へ適用し,高Ku結晶粒とグラニュラ構造との両立を図る. 平成28年度においては、CoPt基合金のグラニュラ化における酸化物種の影響について検討を行った。これは27年度の、CoPt基合金に残存する酸化物構成元素種によって六方原子積層の阻害度合いが大きく異なるという結果を踏襲している。B2O3、TiO2、SiO2, ZrO2等、種々酸化物を用いてグラニュラ膜を作製して構造と磁気特性を調査した結果、コラム状構造の形成度合いは酸化物の融点と強い負の相関を持つことが判明した。特に今回作製したグラニュラ膜の中では、最も融点の低い (~480℃) B2O3を用いたグラニュラ膜では磁性結晶粒の結晶構造および磁気特性がほぼCoPt基合金薄膜と同様であり、酸化物添加による特性劣化を抑制できることが判明した。
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