ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長において、最も重要なプロセスは異種基板上でのダイヤモンド核形成プロセスである。しかしながら、高密度かつエピタキシャルなダイヤモンド核を高い再現性で形成することはこれまで困難であった。本研究では、この課題を解決するために、核形成状態をその場モニタリングする手法を開発した。核形成プロセス時にプラズマを通し、アンテナから基板へ流れる電流を計測することにより、核の状態(密度および結晶性)をモニタリングできることを明らかにし、再現性良く高品質なダイヤモンド核を形成することに成功した。 3C-SiC/Si(001)基板上に形成した高密度エピタキシャル核を用いて、高品質ダイヤモンド薄膜を合成した。膜厚を増加させるほど、薄膜のXRD評価による傾き分布は減少し膜質が向上することがわかった。膜厚75 umにおいて、XRDカーブの半値幅として0.52°を得た。過去の研究において3C-SiC(001)上で最も高品質な膜は膜厚300 umで半値幅0.62°であった。本研究では、より薄い膜厚でより優れた膜質を有するダイヤ薄膜を合成することに成功した。これは、核形成プロセスにおいて、高品質なダイヤモンド核を作り出すことに成功したためである。また、エッチピット形成による欠陥密度評価を行い、膜厚の減少とともに欠陥密度も減少することを確認した。 高感度磁気センサとしての応用が期待されている窒素-空孔(NV)センターの結晶配向を制御することができるため、(111)面ダイヤモンドは大面積センサプラットフォームを構築する材料として有望である。3C-SiC/Si(111)上にヘテロエピタキシャル成長したダイヤモンド薄膜において、NVセンターの形成を実施した。ヘテロエピダイヤモンド内においてもNVセンターが取り込まれ、一部領域ではNVセンターの配向を一方向に制御することに成功した。
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