液晶が自己組織化的に形成する液晶マイクロドロップレットにおける新規光学効果の探索を目的として、主にフォトニック・ナノジェット効果の実験的な観測に取り組んだ。液晶のマイクロシリンダーに平面波を入射すれば、光の波長程度に集束された光のジェットが数波長分にわたって伸びるフォトニック・ナノジェットが得られることをこれまでに数値シミュレーションにより明らかとしてきた。本研究では、高分子マトリクスに分散して得られる液晶マイクロドロップレットを試料として、共焦点レーザー走査型顕微光学系による観測に取り組んだ。まずはそのための光学実験系の構築に取り組み、レーザースポットの2次元面内での走査にはガルバノミラーペアを、深さ方向の走査には対物レンズを装着可能なピエゾ素子を、光強度取得にはMPPCモジュールを採用した。レーザースポットの位置走査と光強度取得とをLabVIEWにより全自動にて行なえるシステムとした。熱硬化性のPDMSを分散マトリクスとし、室温ネマチック液晶E7を分散して数ミクロン径の液晶マイクロドロップレットを得た。光源として波長532nmのDPSSレーザーを用いフォトニック・ナノジェットの観測に成功した。透明電極で挟んだ素子も作成し、電界印加による液晶分子の再配向に基づくフォトニック・ナノジェットの動的制御にも成功した。 一方で、等方性媒質と異方性媒質との界面に存在する表面波であるDyakonov表面波の存在条件の緩和のために、金属ナノ粒子を分散させた液晶メタマテリアルの採用を検討した。異方性媒質を取扱うために拡張されたMaxwell-Garnett有効媒質近似により実効誘電率を評価し、Dyakonov表面波の存在条件が緩和可能であることを明らかとした。そのような金属ナノ粒子分散メタマテリアルの合成のために共同研究者も得ることができ、今後に繋がる成果を得た。
|