本研究は、コレステリック液晶が示す光閉じ込め効果を利用したQ-スイッチレーザーの実現を目的とするものである。本年度はQ-スイッチングに必要な高速な電気光学効果の発見を目的とし、研究を行った。 一次元螺旋構造を形成するコレステリック液晶は、外部刺激として電界を印加することでその構造を歪める。これまでの先行研究では、電界を印加してから十分に時間が経過した定常状態における構造の解析が行われてきた。しかしながら、本研究では電界を印加してからの過渡的な構造変形に注目し、その電気光学効果を調べた。その結果、先行研究においてひとつの変形しか起こらないと考えられてきた電気光学効果の中に、二つの応答成分が隠れていることを見出した。これらは、簡潔に表現すれば(i)螺旋周期が伸びる応答と(ii)螺旋周期が伸びない応答である。前者は、これまで理論及び実験の双方で確認されていた非常に長い応答時間(数10秒)を持つ電気光学効果である。一方で、本研究で発見された後者の応答は、遅い応答時間の原因となる螺旋の伸張を含まない電気光学効果であるため、非常に短い応答時間(数十マイクロ秒)を示した。これらは、高速応答を必要とするデバイス応用に有用な性質であり、本研究課題で目指すQ-スイッチングにも利用できると考えられる。これらの成果は二件の論文の中に報告された。 Q-スイッチレーザーの実現まで至らなかったが、今年度に見出された高速電気光学効果を用いて、実際にQ-スイッチレーザーが実現可能かどうかを今後調べていく予定である。
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