研究課題
前年度、Eu添加GaNを結晶成長する際に、アクセプタ(Zn)とドナー(O)を共添加することで、Eu単独添加やEu,O共添加、Eu,Zn共添加では観測されない、新たな発光ピークを形成できることを示した。今年度は、Eu添加条件の見直しと、添加したEuによりGaN母体のバンド構造中に形成されたトラップ準位の電気的特性評価を行った。(1) 従来からGaNにEuを添加する際の成長温度は重要なパラメータであった。これまで1030℃としていた成長温度を960℃まで下げたところ、発光強度の増大が観測された。また、Znを共添加するためにさらに900℃以下まで成長温度を下げると、3価のEuイオンによる赤色発光が減少することがわかった。そこで、Euイオンの価数を調べるためにSPring-8にてX線吸収端近傍構造(X-ray absorption near edge structure: XANES)測定を行った。これまでの成長条件では、ほぼすべてのEuイオンが3価のイオンとしてドーピングされていた。しかしながら、低温成長した試料では、3価のEuイオンとともに、二価のEuイオンも形成されることがわかった。このことが低温成長における赤色発光減少の原因であると考えられる。また、酸素共添加を促進させるためにN極性GaNへのEu添加を行ったところ、これまでのGa極性GaNへのEu添加と比べてEuがドーピングされにくいことがわかった。(2) 添加したEuイオンがGaNのバンド構造に形成する欠陥準位を、トラップ準位の数を仮定しないでエミッションレートの高分解能測定を可能とするラプラスDLTS(deep-level transient spectroscopy)法により測定を行ったところ、従来の方法では非対称でブロードであったDLTS信号を3種類の欠陥準位に分離できることがわかった。3種類の欠陥準位がよく似た欠陥構造であり、それぞれの形成確率が同程度と仮定すると、直接励起でも観察されているEu-VN-VGa複合欠陥が観測されたと考えられる。
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Scientific Reports
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Journal of Electronic Materials
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