H26年度に作製した、SrTiO3(STO)バイクリスタル基板上に作製したBiFeO3(BFO)薄膜におけるSTO双晶境界近傍の断面TEM像を観察した。その結果、STO基板双晶境界上のBFO薄膜は、転移が多数存在し理想的なドメインウォールを形成できていないことが分かった。そこで、<110>方向に4°微傾斜したSTO(001)基板の一部をArイオンエッチングにより凹凸を作製したパターン化STO基板を作製した。この基板は<110>方向に4°微傾斜したSTO(001)基板が有するステップアンドテラス構造の向きを、パターンを形成することで、一部を逆向きのステップアンドテラス構造にすることができる。このパターン化STO基板上にBFO薄膜を作製することで、帯電した109°ドメインウォールの形成を試みた。この圧電応答顕微鏡像を評価したところ、ステップの向きが変わる場所で帯電109°ドメイン壁が形成されていることが確認できた。これにより、STO基板に微細な凹凸パターンを形成することでBFO薄膜のドメイン壁の任意位置への形成に成功した。パターン化STO基板は双晶ではなく単結晶であることから理想的なドメインウォールが形成されているものと考えられる。今後はこのドメインウォールの断面TEM像観察とその導電性を明らかにしていく予定である。 また、ドメインウォールの物性を明らかにするためにストライプドメインおよび単一ドメイン構造を有するBFO薄膜においてPt/BFO/Ptコプレーナキャパシタを作製し、波長405nmの青紫色レーザ照射下における光起電力効果を評価した。その結果、ストライプドメイン構造を有するBFO薄膜においてレーザ光の偏光方向に依存しない起電力が大きくなることが分かった。これはドメインウォールが有する物性であると考えられる。
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