研究課題/領域番号 |
26820116
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
堀田 育志 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30418652)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ストロンチウムシリケイト / シリコン太陽電池 / 表面パッシベーション / 電界効果パッシベーション / 固定電荷 |
研究実績の概要 |
本研究では、Si(100)基板上にパルスレーザー堆積(PLD)法を用いてSrO薄膜を堆積し、得られたSrO/Si構造を酸素雰囲気中でポストアニールすることによって起こるSrO層のシリケイト化反応を用いてSrシリケイト/Si構造の作製を行った。得られた試料の界面構造をX線光電子分光法(XPS)によって測定した結果、Si2p及びO1s内殻光電子スペクトルよりシリケイト層の形成と界面酸化Si膜の抑制を確認した。また、Srシリケイト/Si構造の熱安定性を調べた結果、600℃以下の温度でSi基板の酸化が起こらない安定な構造を保つことを明らかにした。また、良好なパッシベーション特性を得るために600℃におけるアニール時間の最適化を行った結果、4時間以上のアニールによって電気特性が大きく改善することを明らかにした。これは、SrO膜中へのSiの拡散が促進され、シリケイト化が十分に進むのに要する時間である考えられる。 続いて、上記手法で得られたSrシリケイト層の化学結合状態と膜中固定電荷の相関を調査した。Si基板上にPLD法を用いて膜厚を系統的に変化させたSrシリケイト層を形成し、各膜厚の試料表面の化学結合状態をXPSによって測定した。これを膜厚の関数としてプロットすることで化学結合状態の膜中分布を作成することに成功した。一方、同様に膜厚を変化させた試料のC-V測定の結果から、膜中の固定電荷分布を決定した。これらの間には相関が見られ、特にSrシリケイトに起因する化学結合種の量の減少と共に固定電荷密度の減少がみられたことから、Srシリケイト成分が固定電荷の起源に関与していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、組成傾斜薄膜を用いる方法でSrxSiOx+2薄膜の組成及び化学結合状態と固定電荷の相関について調査する予定であったが、実験を進めていくうちにSrO薄膜のシリケイト化によって得られたSrxSiOx+2薄膜でも、膜厚を制御することで組成や化学状態の分布を持たせることが可能となった。そこで、この薄膜試料についてにXPSを用いて組成と化学結合状態を測定し、また電気特性測定により固定電荷密度を測定し、それぞれの結果を試料の膜厚の関数として比較することで、化学結合状態と固定電荷の相関を明らかにすることができた。本研究の結果は、フルペーパーにまとめられ、現在投稿の準備をしている段階である。 また、さらに詳細な相関を調査するため、当初の計画通り組成傾斜コンビナトリアル薄膜の作製準備を進めており、現在H26年度に導入した水晶振動子膜厚計の立ち上げと組成傾斜薄膜の作製条件の最適化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
組成傾斜コンビナトリアル法を用いてSrxSiOx+2のxに対する面内組成傾斜薄膜の作製を行う。組成傾斜方向に微小な複数の電極を形成することで、組成の異なる試料に対する固定電荷密度の評価を一つの試料内で系統的に行う。同時に、マイクロX線光電子分光法(XPS)を用いて試料面内の局所的なシリケイト組成と化学結合状態を測定し、電気測定から得られた固定電荷密度との対応関係を調査する。 また、膜厚(面直)方向への組成傾斜膜の作製を試みる。この実験より、膜厚方向への組成または化学結合分布自体が固定電荷密度に与える影響を調査する。これによって膜厚方向での構造分布が固定電荷の起源となりうるか否かを調査する。 得られたSrxSiOx+2の固定電荷マッピングデータから、固定電荷量が最大となる組成や構造の組み合わせた決定する。さらに、Si基板上に最適組成の薄膜を作製し、表面再結合速度の測定より電界効果パッシベーション膜の働きを評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に予定していた研究成果論文の投稿が次年度にずれ込んだため、論文投稿費分を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額分は、論文投稿費に充てる予定である。
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