研究実績の概要 |
組成傾斜コンビナトリアル法を用いてSrSiO3からSr2SiO4の組成間に対する面内組成傾斜薄膜の作製を行った。この組成傾斜試料の電気測定を行うため、新たに電極パターンのメタルエッチングマスクの作製を行った。このマスクを用いて薄膜の組成傾斜方向に複数の微小電極を形成し、組成と電極位置を対応付けることで実効固定電荷密度の組成分布を測定した。また、測定する電極近傍のXPSスペクトルを測定することで、対応する組成部分の化学結合状態を調査した。 組成傾斜薄膜を6領域に分割することで、(SrSiO3)1-x(Sr2SiO4)xで表される膜組成についてx=0, 0.2, 0.4, 0.6, 0.8, 1に対応する点の測定を行った。これらの測定より、xが大きくなるにつれてSi/Sr値が小さくなり、組成傾斜膜が形成されていることがわかった。また、固定電荷密度が増加する傾向が見られた。 一方で、新たにSrSiO3薄膜の成膜に関する問題点が明らかになった。PLD法でSrSiO3薄膜を作製する場合、表面の形状がラフになる傾向が見られた。このような傾向はSr2SiO4の膜では見られず、各組成の膜で成膜の様式が大きく異なっていることが考えられる。そこで、各材料の融点を調べたところ、SrSiO3の融点は1580℃であるのに対し、Sr2SiO4は2325℃であった。PLD成膜の場合、低融点材料ではドロップレットの形成が頻繁に起こり、平坦な成膜が難しくなることが分かった。よって、より平坦性が高い薄膜試料で評価するためには、融点の高いSr2SiO4の近傍組成での調査有効であると考えられる。
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