薄膜形成技術を用いて異方性ナノコンポジット磁石の基礎検討を行った。構成材料として、高磁気異方性を持つRT5型希土類-遷移金属合金と高飽和磁化を持つFe基合金を用いた。(a)RT5合金の材料拡張性、(b)RT5合金とFe基合金の積層構造を調べた。 (a)遷移金属(T)としてCo、希土類金属(R)としてSm、Gd、Yを用いて材料拡張性を検討した。bcc(100)配向させた金属下地層上で、磁化容易軸[0001]が膜面内にあり、(11-20)が基板面と平行なエピタキシャルSmCo5,GdCo5,YCo5膜の形成技術を開発した。SmCo5およびGdCo5合金では、bcc(211)配向下地層を用いて、[0001]方位が面内にあり(1-100)が基板面と平行なエピタキシャル膜の形成も可能である事を見出した。一方、YCo5合金の場合、類似条件ではエピタキシャル膜が得られなかった。RT5構造を持つ膜の形成条件はR元素の種類に依存することが分かった。(b)硬磁性材料としてSmCo5合金、高飽和磁化を持つ軟磁性材料としてFe-Co合金を用いて多層エピタキシャル膜の形成条件を検討した。積層膜形成過程を反射高速電子回折法で計測し、積層数の増加に伴いSm-Co/Fe-Co界面で非晶質相が介在する傾向があることが分かった。これらの知見に基づき、ナノコンポジット磁石構造対応の多層膜形成条件の明確化を図った。 平成27年度に実施した研究により、RT5合金のR元素の拡張性が明らかになるとともに、Fe-Co膜との積層化における課題を明確化することができた。前年度までにRT5合金のT元素の材料拡張性を検討済である。RおよびT元素の選択もしくは多元化により結晶性に優れた多層エピタキシャル磁性膜の形成可能性が増大した。また磁気特性制御性も大きいため、本検討技術はナノコンポジット磁石形成基本技術として高い可能性を持つ。
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