研究課題/領域番号 |
26820119
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研究機関 | 米子工業高等専門学校 |
研究代表者 |
田中 博美 米子工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60511491)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子・電気材料 / 解析・評価 |
研究実績の概要 |
本研究はBi系高温超伝導材料の臨界電流密度(Jc)および、その異方性(γ:磁場によるJcの低下)を改善し、Bi系高温超伝導材料の実用化を促進することを目的とする。具体的には以下の2点について検討を行う。 ① Bi系高温超伝導材料中に構造歪を積極的に導入する。構造歪はバッファー層(SrO)にイオン半径の異なる元素(Ca, Mg)を置換して導入する。これにより磁束が安定して存在できる非/弱超伝導相が形成されJc性能(絶対値・異方性)の改善が期待される。 ② 汎用型バルク敏感光電子分光を用いて元素置換により生じた超伝導体の電子状態・化学状態の変化を明らかにする。 また、研究対象には電気的特性が結晶粒界の影響を受けない完全針状結晶を採用する。特に本年度はBi系超伝導材料におけるJc特性改善を行うため、①のBi系超伝導材料におけるJc増大(Ca添加およびSr組成の低減)に取り組んだ。これまでの我々の研究により、Bi系超伝導材料におけるJc値の改善には、バッファー層(SrO面)にイオン半径が異なるCa元素を添加することが効果的であることが分かってきた。そこで、Ca添加量の一層の増大を試みた。具体的には、母材であるガラス急冷体の組成Bi : Sr : Ca : Cu = 2 : x : y : 2yにおけるCa組成比yをy = 2~5の範囲で増加させた。 加えて、Caの置換先であるSrの組成xをx = 2~0.5に減らすことで、Caの置換を起こり易くさせた。その結果、Ca置換量(Ca/Sr置換量)が~50%の範囲ではJcが改善されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究でBi系高温超伝導ウィスカーに添加するCa不純物を増加させるために、Caの置換先であるSr組成を減らしてCa置換を起こり易くさせた。その結果、Ca置換量(Ca/Sr置換量)を~60%まで高めることに成功した。特に、Ca/Sr置換量が~50%の範囲ではJcも系統的に増加していくことを突き止めた。一方で、Ca/Sr置換量が55%以上は、Bi系高温超伝導ウィスカーのサイズおよびJcが共に減少した。このことから、固溶限界は55%付近であることが分かった。 以上のことから、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
① Bi系超伝導材料におけるJc異方性の改善:Mg添加 異方性γを改善し、コイル応用等で全方向磁場が印加されても高いJcを維持できるようにする。具体的にはCu1234系でγ改善に実績のあるMg添加を試みる。 Mgは置換先であるSrO層のSr2+イオンに比べて、イオン半径が極端に小さい(Mg2+: 0.57Å < Sr 2+: 1.13Å)。そのため、超伝導電子対の重なりが大きくなり、磁場に対して強い超伝導性を示すと期待される。
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