電子機器の軽薄短小化のため,Al配線化が進められ,Al合金とステンレス鋼との接合や医療用にはチタンとアルミニウムの接合など,高信頼性を有した接合部形成技術が望まれるようになった.本研究では,接合阻害因子である酸化皮膜を低温で熱分解する金属塩に置換除去し,接合中の加熱により金属面を露出させる金属塩生成接合法を種々の金属間の接合部に適用し,その効果を検討した. A5052/SUS316Lの固相接合において,Al側の酸化皮膜を酢酸やギ酸で金属塩被膜に置換除去し,接合中の加熱により熱分解させることで,処理を施さなかった場合に比べ最大で2倍の接続強度を有する継手が得られることを明らかにした.また,FT-IRによる処理表面の化学分析の結果,処理時間の増加とともに金属塩被膜量が増加する傾向が認められ,最適な被膜量があることがわかった. インサート金属を用いたAl合金の液相拡散接合において,インサート金属表面を各種有機酸にて金属塩被膜を付与し,液相拡散接合を試みた結果,処理を施さなかった場合に比べ最大で2倍以上の接続強度を有した継手が得られることがわかった.またその後の研究で,インサート金属は自身が融点に達することで,接合部外周へ排出されるものの,最適な厚さが存在することが明らかとなった. Alインサート材を用いたチタンの固相接合において,金属塩被膜を付与したAlインサート材を用いることで,被膜を付与しなかった場合に比べ約10倍の接合強度を有する継手が得られることがわかった.また破面観察の結果,Alインサート材中での母材破断であることがわかった.一方で,接合温度の上昇に伴い金属間化合物層内での破断に変化していたことから,接合条件の選定には注意を要することが示唆された.
|