研究課題
本研究では、ナノスケールSOI-MOSFETにおいて、ソースからチャネルに入射する電子のエネルギーを揃える独創的な手法(すなわちソース端近くのリンドナーのエネルギーフィルタリング効果)によって、立ち上がり特性の急峻化を実現することを目的とする。これまでは、主にチャネル中央部のドーパントを介した単電子トンネル輸送を調べてきた(例えば、選択ドーピングの実験(Sci. Rep. / Nature Publishing Group, 2014)、第一原理シミュレーション(J. Appl. Phys. 2014)など)。しかし、本研究では、ソース端付近のドーパントのFET特性に与える影響を調べることが重要となる。平成26年度に得られた主な結果は以下のとおりである。1. 高濃度ソース・ドレインのナノSOI-MOSFETの作製:チャネル幅約10nm、厚さが約10nm以下の微細チャネルをもつSOI-MOSFETを作製した。ソースとドレインは高濃度(約1E19cm-3)にリンをドーピングし、チャネル部はノンドープとした。この構造では、I-V特性がリードの端付近の少数個のリンドナーによって影響されると思われる。2. SOI-MOSFETのI-V特性:チャネル幅が小さいFETでは、低温で明瞭な単一電子トンネル(SET)特有の電流ピークが観察され、その電流ピークは比較的高い温度(>100K)でも消失しないことがわかった。チャネルは意図的にはドーピングしていないため、観測されたSET特性はリードの端付近に拡散したリンによる量子ドットに起因すると推察される(Silicon Nanoelectronics Workshop(京都、2015年6月)にて発表予定)。次のステップでは、このドーパント量子ドットのチャネル内での位置をスタビリティダイヤグラムと呼ばれる特性評価から明らかにする必要があり、その後、室温での立ち上がり特性(サブスレッショルドスロープ)との関係を調べることによって本研究目的を達成する。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の計画通りに、デバイスの設計と製造を完了した。計画を先取りして100Kを超える高温での単電子トンネル特性を得ることができた。まだ、不確実な点があるが、ソース端からチャネルに微小距離拡散したドーパントに起因すると考えることができ、当初の研究計画で考察したモデルとほぼ整合している。よって、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
平成27年度は、ナノワイヤSOI-MOSFETの測定を完了し、高温トンネル動作のためのモデルを明確化する。具体的には、スタビリティダイヤグラムの測定から、高温トンネリング動作に寄与する重要な特性、すなわち量子ドットの位置についての情報を得る。さらに、この理解に基づいて、室温ID-VGに焦点をあて、立ち上がり特性(サブスレッショルドスロープ)を評価して、急峻な電流変化の実現を目指す。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (28件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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