研究課題/領域番号 |
26820130
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
宮嶋 茂之 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50708055)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電流比較器 / 単一磁束量子回路 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
超伝導ディジタル回路である単一磁束量子(SFQ)回路に用いられる電流比較器の動作解析を行った。SFQ比較器としてはQuasi-One-junction SQUID(QOS)を利用したQOS比較器を選んだ。主に雑音を含んだ数値計算によるQOS比較器の解析を行った。SFQ回路における電流比較器の動作は熱雑音による影響を受けるため、数値計算においても熱雑音を考慮した雑音パラメータを入力して行った。QOS比較器を構成する回路パラメータであるインダクタンスの値を変えて数値計算を行った結果、動作が回路パラメータにより大きく変わることが明らかになった。これは回路内に磁束量子が保持され、動作モードが混在していることに由来していると考えられる。また、数値計算結果と比較を行うために、実際の回路の評価を行うべく、測定系及び回路の作製を行った。電流源、電圧源、パターンジェネレータ、オシロスコープをすべてプログラム制御できるような測定系の構築をめざし、現在ほぼその環境を整えた状態である。更に、産業総合技術研究所のCRAVITYを用いてNb多層プロセスによるQOS比較器の作製を行った。1つのチップの中に複数の回路パラメータを持つQOS比較器を作製することで、作製プロセスによる回路パラメータのばらつき、同じウェハ内で作製されたチップ間での回路パラメータのばらつきによる動作への影響を評価できるようにしてある。チップ内にはQOS比較器以外にも、測定環境やチップの歩留まりを評価できる回路や、実際に応用することを目的とした中規模のディジタル回路の作製も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱雑音を雑音源とする雑音パラメータを含んだ数値計算により、QOS比較器の系統的な動作の解析に成功した。QOS比較器を構成する回路パラメータの一部であるインダクタンスの値により動作モードが混在することを明らかにした。また回路の設計、作製を行い、測定系の構築もほぼ完了した。これにより実験によりQOS比較器の動作の解析を行う準備を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
測定系の構築を完成させる。これによりまずSFQ回路の測定を問題なくできる環境を整備する。数値計算については、QOS比較器のインダクタンス以外の回路パラメータによる動作の依存性を系統的に評価する。また、数値計算に実際の回路レイアウトまで含めた回路パラメータを導入することで、より詳細な解析を行う。これにより実験、数値計算の両面から解析を行い、QOS比較器の設計指針を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は3次元電磁界シミュレータの数値解析ソフトのライセンスを購入する予定だったが、このソフトの購入をやめ、国際学会発表の旅費、論文発表及びチップの試作費に割り当てた結果、差分が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
SFQ回路の測定系はほぼ整備されたが、一部完了していない部分があるため、測定系の構築の完成を目指して計測器等の購入を行う。また雑音を含んだ数値計算に用いる計算機の購入購入を行う。更に産業技術総合研究所のCRAVITYを用いたチップの試作費に使用する。また、国際学会発表及び論文発表に使用する。
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