昨年度に引き続き、容易に利用できる金属粉末のレーザ積層装置を用いて導波管形状を作製した際、表面粗さと材質が等価導電率に及ぼす影響を分析した。材料にSiを混ぜたアルミニウム合金を使用し、直径30μmの粉末で造形した場合、60GHz以上の高周波での応用はまだ損失が大きく、40GHz帯以下の周波数領域では十分に適用できると判明した。 二次元ビーム切り替えは5G(次世代移動通信システム)の実現に不可欠な重要技術となっている。受動型で低損失かつ低コストの二次元ビーム切り替えを実現するために、ショートスロット2平面結合器を用いた2次元バトラーマトリックスを提案した。従来の単一E面またはH面ショートスロット結合器を使用したものに比べ、更なる小型化と低損失性を可能とした。 4x4ポート入力2次元バトラーマトリックスを22GHz帯で設計し、レーザ積層技術による試作を行った。材料として当初アルミニウム合金を考えたが、体積が大きいため、試作費に数百万円がかかるため断念せざるを得なかった。代替案としてABS系樹脂材料を使用し、造形後に1.5μmの銅メッキを施した。また比較として、黄銅を用いた切削による加工も行った。ベクトルネットワークアナライザによる測定を行った結果、挿入損失を除いて、ほぼ設計通りに振幅と位相の分配特性を実現できた。また金属切削加工に比べて、レーザ積層品は約1~1.4dB 材料損失が大きいことも測定で判明した。その原因は組み立て精度の他に主に表面粗さとメッキの不完全性にあると判明した。今後はメッキの改善または金属粉末の使用で十分性能が改善すると期待できる。
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