平成28年度は、まず、オンサプライ通信に関する検討として、電力伝送技術を用いた無線センサネットワークの実用可能性検証を行った。移動しながら電力伝送を行う装置の導入を提案し、移動装置のバッテリー量および通信動作に必要となるエネルギー量のモデル化を行った。そして、各通信ノードの獲得エネルギー量を表す式を理論的に導出し、評価を行った。 一方、オンデマンド通信については、ウェイクアップ機構を用いて移動をしながらノードを起動しデータ収集を行う無線センサネットワークに関する検討を行った。基本的な起動・通信プロトコルを提案するとともに、データ収集を行うための経路制御法を提案した。提案経路制御法では、異なる特徴を持つウェイクアップ方式を組み合わせることにより、各センサノードの位置が未知の状態から、適切な経路を決定することが可能である。提案法について、計算機シミュレーションによる評価を行うとともに、種々の最適化法を適用することで、決定される経路の最適性の検証も行った。また、IEEE 802.15.4規格に基づく通信ノードにウェイクアップ受信機を実装したノードを用いた実験評価も行った。実験では、移動データ収集ノードが実際に各センサノードを起動しながら経路を決定するための情報を収集し、その情報に基づき経路を決定、さらにデータ収集を行った。これにより、実環境での提案データ収集法の有効性を確認することができた。 本研究期間全体を通じ、ウェイクアップ受信機を用いた無線システムのためのオンデマンドアクセス技術およびエネルギーハーベスト・電力伝送技術に基づいたオンサプライアクセス技術を確立した。これらの技術は、無線通信システムの超省電力化、バッテリーレス化に繋がる。特に、理論、シミュレーション評価に留まらず、実験による評価を行ったことで、種々の提案法の実用性を実証することができた。
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