本研究ではチップレスRFIDタグの最適設計およびチップレスRFIDタグを利用したセンサタグの開発を行った。チップレスRFIDタグはICチップを持たないため,メンテナンスフリー・廉価などの利点をもち,センサネットワークなどの省エネ,安全・安心のために重要な技術である。 1年目,2年目ではFDTD法と遺伝的アルゴリズムを用いたトポロジー最適化およびパラメータ最適化によりこれまでの知見にとらわれない新しい透過型のチップレスRFIDタグを開発した。透過型のチップレスタグは基本構造が長方形の金属膜であるため,高周波においても大きい反射をもつ。 また,開発したチップレスRFIDタグを利用したクラックセンサタグおよび温度センサタグを提案した。クラックセンサはクラック・歪によりチップレスRFIDタグにクラックが生じ,それにより共振周波数が変化すること利用したセンサである。温度センサではパッシブRFIDとチップレスRFIDの技術を用いサーミスタの抵抗の温度変化により散乱波が変化することを利用した。これらのセンサ技術はトンネルなどの管理に重要であると考えらえれる。 最終年度では,さらなるチップレスRFIDタグの高度化のために新たにフラクタル構造を有するスリット型チップレスタグを提案し,従来のチップレスタグと比較し高いQ値をもつことを示した。スリット型チップレスタグは長方形上の金属膜にC型形状のスリットをフラクタル状に設けた構造をしており,高Q値,小型化可能,作成容易な形状という利点をもつ。また,ソフトウェア無線を用いた簡易的なリーダを作成し,タグのデータを読み取れることを確認した。
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