本研究では、内耳蝸牛の生理機能解明へ向けた研究基盤の構築のため、医工連携によってナノレベルの生体断層撮像に向けた多波長ホログラフィック高精細OCT(Optical coherence tomography)の開発を行った。 特に、多波長ホログラフィックOCTのアイデアを発展させた多波長走査型共通光路en-face OCT (MS-OCT)を製作し、独自に開発した振動計測手法である、広視野ヘテロダイン干渉法(Wide-filed heterodyne interferometric vibrometry; WHIV)を組み合わせ、生体内部の2次元振動計測を実現した。 多波長走査型共通光路en-face OCT技術は、ファブリペロー共振器と超広帯域Super luminescent diode (SLD)を用いて生成した低コヒーレンス光コムを光源とし、ファブリペロー共振器(FPE)の共振器長を可変にすることで深さ方向のスキャンを実現した。OCT計測実験では、パラフィンで固定されたマウスの肝臓細胞組織の3次元OCT計測を行い、提案手法の有用性を確認した。光源は、中心波長840nm、帯域幅160nmの超広帯域SLDを用いた。FPEのピエゾアクチュエータによって光コムのコム間隔を操作し、CCDカメラを用いたフルフィールド計測によって、3次元OCTの深さ軸方向分解能は2.5μmまで向上した。 さらに、WHIVによって、生体の数10kHzの音波領域の振動を従来の100フレームレート級のCCDやCMOSカメラを使用して広視野高解像度で計測可能になった。WHIV法の有用性確認のために、上記光学計測装置を用いてOCT計測に用いたマウス肝臓細胞の各層での2次元振動分布計測を行い、高速な生体内部振動計測が可能であることが示された。実験では、試料側の振動周波数を1.000kHzに設定し、干渉板にもピエゾ素子を取り付け1.0034kHzで振動を加えることによって、CCDカメラの512枚のヘテロダイン干渉画像の時間変化から独自に開発した信号処理手法を適用し、2次元の振動周波数、位相、及び振幅分布を求めることができた。
|