研究課題/領域番号 |
26820156
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笈田 武範 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70447910)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 光ポンピング原子磁気センサ / バイアス磁場調整 / 勾配磁場 / 帯域制御 / アクティブ磁気シールド |
研究実績の概要 |
本研究課題では,磁気シールドレス環境でも光ポンピング原子磁気センサを用いて様々な周波数の磁気信号を高感度に計測できるシステムを開発することを目指して理論的・実験的検討を行っている. 2年目にあたる平成27年度には,初年度に得た知見を元に,アクティブシールド型バイアス磁場調整コイルを含む一様磁場キャンセルコイル群および計測帯域制御を行う勾配磁場コイル群を一体として,我々が保有する光ポンピング原子磁気センサモジュールに設置できるように設計および試作を進めた.この際,実装時にコイルの巻き線同士が干渉したり,各コイルから出力される磁気ノイズが干渉したりするという課題を確認した.磁気ノイズに関しては光ポンピング原子磁気センサの感度に直接影響を与える重要な要素であるため,本年度その対応を優先して検討した. 特に,磁気ノイズの中でも各コイルに提供される電流に起因するノイズの影響が大きいと考えられるため,本年度は光ポンピング原子磁気センサを用いて10 kHz帯の磁気信号を計測する際の磁気ノイズ低減について検討を行い,低域通過フィルタまたはフィードフォワード制御がコイルから発生する磁気ノイズの低減に有効であることが確認されたので,その有効性を公表した. また,最終年度には計測対象外振動磁場をキャンセルするシステムを平成27年度までに構築してきたシステムに統合するので,上記のコイル群に加え,振動磁場キャンセル用コイルを含めたコイルシステムの設計・試作を進めている.最終的には,振動磁場キャンセル用コイルを光ポンピング原子磁気センサの出力を用いてフィードバック制御することによりノイズの低減を目指す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に実施を予定していた計測帯域調整および高次シミングシステムの構築に関しては,勾配磁場を用いた計測帯域調整の有効性を確認し,公表も行った.そこで,初年度に設計を行ったアクティブシールド型のバイアス磁場調整コイルなどと統合する形でコイル群の設計・試作を進めている.しかしながら,複数のコイルを実装する上で干渉や各コイルから出力される磁気ノイズの問題点も明らかになった.そこで,光ポンピング原子磁気センサを用いて10 kHz帯の磁気信号を計測する際の磁気ノイズ低減について検討を行い,コイルへの電流供給回路に低域通過フィルタまたはフィードフォワード制御を適用することがコイルから発生する磁気ノイズの低減に有効であることを確認し,公表も行った.さらに,実装したコイル群により生成される磁場を評価するシステムに関しても,平成26年度に取得したフラックスゲートセンサを用いて構築を進めている. また,平成28年度に予定している計測対象外振動磁場キャンセルシステム用のコイルも上記コイル群に組み込めるよう設計を更新しており,これを平成28年度に実装し,評価を行う. 以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,まず,アクティブ磁気シールド型バイアス磁場調整システムを含む一様磁場調整コイル群,勾配磁場コイル群,計測対象外振動磁場キャンセルシステム用コイル群の実装を完成させ,その有効性を評価システムにより確認する.このとき,平成27年度に実施した電源ノイズ低減なども適用し,光ポンピング原子磁気センサの感度向上を目指す.そして,最終的には,シールドレス計測に向けた準備を推進する. 最終年度に実施予定のフィードバック型のノイズキャンセルシステムが予定通りに有効に働かない要因として,フィードバック制御回路部分へのノイズの混入や他のコイルから出力されるノイズを増幅してしまう可能性などが考えられる.フィードバック制御回路部分へのノイズ混入に関しては,ロバスト制御などの導入やコイル設計の最適化によって研究を推進する.また,コイル間の干渉によるノイズの増幅については,設計の最終評価として,各コイルから出力される磁場分布のシミュレーションを行い,干渉の評価,設計の最適化などを行うことにより,課題への対応を図る予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本学工学研究科の共同利用施設を利用してコイル試作の一部を行ったことや,必要となるコイル群を一括して試作したことによる経費の抑制により余剰が出たこと,また最終形のシステムに関しては,平成28年度試作予定のコイル群と合わせて統合したシステムを構築した方が効率的であると判断したため,次年度使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
コイル試作費用,システム回路設計・試作費用などの物品費として700,000円,成果公表のための旅費として150,000円,論文投稿費などその他の費用に80,000円を支出する予定である.
|