研究課題/領域番号 |
26820166
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
細江 陽平 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50726411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロバスト制御 / 確率系 / 不確かさ / ポリトープ / リアプノフ行列 |
研究実績の概要 |
本研究は,ランダム行列を端点にもつ確率的ポリトープと呼ぶ数学的概念を導入し,その概念の活用を通して,不確かな分布を有する確率系を対象としたロバスト制御の理論基盤を整備することを目的としている.本年度ではまず,確率的ポリトープで特徴づけられる系のロバスト安定性を解析する手法の確立に焦点を絞り,数値的に評価が可能なロバスト安定条件の導出を試みた.そして,確率的ポリトープを構成する有限数の端点行列の最大特異値(の期待値)を評価することを通して,従来の確定系に対する議論と同様に,そのポリトープに含まれる無数のランダム行列を尽くしたロバスト安定解析が可能であることを示した.また,この解析(および対応するロバスト安定条件)は一般に保守的になってしまう(すなわち,実際にはロバスト安定であるのにロバスト安定だと判定できない可能性がある)ことが数値的に判明したので,その保守性を低減するために2つのアプローチを考案した.1つは,確率的ポリトープを構成するランダム行列の最大特異値を直接評価するのではなく,その(複数時間ステップ分の)積を考えることにより保守性の低減をはかるものであり,もう1つは,リアプノフ行列と呼ばれる変数を用い,条件式中のランダム行列に相似変換の自由度をもたせることで保守性の低減をはかるものである.前者は,積をとる時間ステップ数を大きくとることにより,計算時間が増加するもののロバスト安定解析の保守性を劇的に低減できることが数値的に確認できた.また後者は,前者に比べて保守性の低減に関しては効果が限定的であるが,条件式が行列不等式を用いて記述されており,状態フィードバック設計への拡張が容易であることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に遂行予定であったロバスト安定解析に関する研究は,上記の通りおおむね完了した.また,次年度に遂行予定であるロバスト安定化状態フィードバック設計に関する研究は,一部の基礎的な内容に関して繰り上げて検討中であり,総じて順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は当初の計画の通り,確率的ポリトープで特徴づけられる系をロバスト安定化する状態フィードバックの設計法について検討する.その際,本年度に得られたロバスト安定解析に関する成果を活用することで,保守性が低い条件式のもとで性能のよい制御器が得られる方法の確立を目指す.また,設計にあたっては解析の場合以上に計算コストがかかることが懸念されるので,その対策についても併せて検討する.
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