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本年度は，前年度に整備したロバスト安定化制御器設計手法を２つの観点から拡張する研究に取り組んだ．その観点の１つ目としてまず，上記設計のための条件式を，確率系の状態応答に関する収束性能に相当する安定度も評価できるように一般化した．これにより，単に応答が収束することを保証するだけでなく，その収束の速さも考慮に入れて制御器を設計することが可能になった．なお，この拡張を可能にするアイディアは汎用的であるので，本研究で導出したその他の条件式に対しても同様に活用が可能である．また，上記観点の２つ目として本年度ではさらに，確率系のダイナミクスを決めるランダム行列が各時刻でとる値が前時刻での値に依存する場合にも，そのロバスト安定性を保証可能かどうかについて検討を行った．具体的には，そのようなランダム性を有する確率系の１つとして，係数行列が有限モードマルコフ連鎖によって切り替わる確率的スイッチドシステムを考え，その系を本研究で整備した設計法により安定化する方法について検討した．そして，系の状態空間を適切に拡大すれば，そのような系であってもロバスト安定化が可能であることを明らかにした．
以上の研究の遂行により，本研究で取り組むことを予定していた課題は概ねすべて完了することができた．また，一部の課題については当初の計画以上に進展した側面があり，確率系の制御に関する新たな可能性を見出すことができた．本研究により得られた知見を今後の研究にも活かしていきたい．
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