研究課題/領域番号 |
26820168
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
中茎 隆 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30435664)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 不連続外乱 / 制御系設計 / 安定性理論 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究計画に従って、プラントの入力端に不連続外乱が存在し、アクチュエータの特性が積分器で近似されるケースにおいて、不連続外乱を補償する制御方法について検討した。この制御問題は、いわゆる「マッチング条件を満たさない不連続外乱」に対して有効な制御則を求める問題となる。 一般に、不連続外乱を補償するために有効となる制御器は不連続なスイッチング動作を持つ制御則であるが、アクチュエータのダイナミクスを考慮する必要があるため、バックステッピング法を用いて制御則の再設計が必要となる。「マッチング条件を満たす不連続外乱」に対する補償器や「バックステッピング法を用いてアクチュエータのダイナミクスを考慮した制御系再設計法」はすでに確立している技術であるが、「マッチング条件を満たさない不連続外乱」に対しては、制御系設計論の大幅な見直しが必要となる。 今年度はこの問題を解決するために、不連続なリアプノフ(ライク)関数を用いた閉ループ系の安定性の証明に取り組んだ。申請書で記載したようにその基本的な方針、解決のための手掛かりは得られていたため、安定性の証明を仕上げることは達成できたが、その数学的な妥当性についての検証・評価を引き続き行っている。不連続なリアプノフ関数を用いた制御系の設計法の確立は、制御理論としての重要性に加え、摩擦等の不連続特性を持つ実システムの制御においても重要となる。従って、研究成果は、平成27年度中に学術論文として投稿を完了することを目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、(1)制御系設計論の確立(安定性の証明、シミュレーションによる理論検証も含む)、(2)実機実験による理論の検証を計画していたが、実機実験による検証が完了していないため、進捗状況はやや遅れている。予備的な実機実験では制御系設計法を支持する結果も得られているが、多方面から精密な評価が必要であるため、引き続き検討を進めて行く。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は2ステップで構成されている。ステップ1では、マッチング条件を満たさない不連続外乱が存在し、アクチュエータのダイナミクスが積分器で近似されるケースにおいて、不連続なリアプノフ(ライクな)関数をベースとしたバックステッピング法を確立し、制御目的を達成する。ステップ2では、アクチュエータのダイナミクスを積分器に限定せずに一般形で考え、ステップ1で得られた理論を拡張する。これら研究課題において制御理論として最も本質的な点は、「不連続な仮想制御入力に対するバックステッピング法の確立」であり、これはステップ1で解決されるべき問題である。一方、様々な実システムへの応用を考える上では、アクチュエータのダイナミクスは一般形として理論を確立する必要があり、これがステップ2で取り組む課題である。研究が計画通りに進行しなかった場合は、ステップ1に注力し、まずは理論的な困難さを解決することを目指す。
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