タスク実行に必要な運動自由度より少ない数のアクチュエータをもつ劣駆動システムは,その運動が積分不可能な微分方程式拘束(非ホロノミック拘束)に支配されている.本研究では,劣駆動マニピュレータや垂直離着陸(VTOL)機のように,位置・速度・加速度に依存する,動力学的な非ホロノミック拘束を有す劣駆動システムに対して,“ある種の運動の結果,間接的に得られる状態変位量(ホロノミー)”に着目した制御手法を構築することが目的である.最終年度である29年度に得た主な実績は以下のとおりである: 1. 周期制御入力による運動計画法を,劣駆動マニピュレータの制御へ応用した結果をまとめた論文が国際学会に採択され,口頭発表後,関連研究者と議論した. 2. 1の結果をもとに,駆動関節として適当なモータを選定した.同モータを取り扱う業者と相談して設計と機構の詳細をつめ,所属機関に実機実験の環境を整えた. 当初計画からの遅れすべてを挽回することはできず,構築した制御手法の実験的評価,およびそこからの拡張が課題として残った.本研究期間終了後も,これらの課題には継続的に取り組み,解決を目指す.一方で,これまでに国内学会にて1件,査読付き国際学会にて3件(うち1件は招待セッション)の発表を行っており,ホロノミーに着目した制御手法の基本的な部分は構築できたといえる.現在,これらの発表成果をまとめ,学術雑誌へ投稿する論文を執筆している.さらに,28年度に所属機関から機会を得た長期学外研究をきっかけに,University of Groningen (The Netherlands) の研究グループとマニピュレータの視覚サーボに関する共同研究をはじめており,現在,劣駆動な問題設定に対する制御則設計と実機システムでの性能評価に取り組んでいる.
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