本年度の研究内容を実験的検討,解析的検討にわけて記載する.なお,本年度は特に解析的検討を主軸とした検討を行った. 【実験的検討】 昨年度から引き続き,二水セッコウ自体の力学特性を把握するために,作製した二水セッコウによる曲げ試験を行った.二水セッコウの力学特性から,空隙率と強度の強い関係があることが分かり,既往の実験との整合性を確認した.さらに,二水セッコウの含水比や作製時の拘束条件が力学特性に影響を及ぼすことを確認した. 【解析的検討】 本解析は,水和反応モデル,反応-拡散モデル,ひび割れ進展モデルの3つの解析によって構成され,硫酸塩劣化によるセメント系材料の劣化を表現している.本年度は各解析の精度を向上させた.すなわち,水和反応モデルは丸山らの提案するCCBMを導入することで水和反応プロセスの再現性は飛躍的に向上した.また,反応-拡散モデルでは,ひび割れ中の硫酸イオン濃度が固相の変質プロセスと液相の拡散現象に影響するのかを解析的に検証した.その結果,ひび割れ中のイオン移動を考慮しなければ,ひび割れ後の硫酸イオンの物質収支が実現象と一致しないため,硫酸塩劣化のメカニズムに影響するだけでなく,長期的な耐久性予測精度に影響することを示唆した.また,実験的検討から得られた二水セッコウの力学的情報を本解析上で考慮した検討を行ったところ,二水セッコウ自体がひび割れ進展に影響するといったことは見られなかった.しかしながら,劣化後に力学的作用を受ける場合,低剛性の二水セッコウの影響は変形や付着劣化に起因すると考えられるため,部材レベルの検討を行う必要があることを認識した.なお,これらの結果を整理して平成29年度に海外ジャーナルに投稿する予定である.
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