研究課題/領域番号 |
26820183
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
古川 陽 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (60724614)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 境界要素法 / 飽和多孔質弾性体 / 異方性 / 波動 |
研究実績の概要 |
平成26年度の目的は,異方性飽和多孔質弾性体に対する周波数領域境界要素法の開発である.この研究目的を達成するため,はじめに,異方性飽和多孔質弾性体の波動問題に対する基本解の導出を行った.その後,導出した基本解を用いて,周波数領域境界要素法の開発を行った. 異方性飽和多孔質弾性体の3次元波動問題に対する周波数領域基本解は,研究代表者の先行研究である2次元波動問題に対する基本解と同様に,Radon変換を用いて導出した.導出された基本解は,当初の想定通り異方性の影響を考慮するための単位球面積分を含む形式で得られた.本研究で導出した基本解の検証は,等方性飽和多孔質弾性体との比較によって行った.これは,異方性飽和多孔質弾性体に対する基本解が,異方性のみならず等方性飽和多孔質弾性体の波動問題にも適用できるためである.異方性を考慮した基本解を取り扱う場合には,前述した様に単位球面積分の計算が必要となる.本研究ではGaussの数値積分公式を用いて,この積分の計算を行った.異方性および等方性に対する基本解の値を比較すると,両者の値は概ね一致し,本研究で導出した基本解の妥当性が確認された. 次に,導出した基本解を用いて,周波数領域境界要素法の開発を行った.定式化には,固体骨格部の変位と間隙流体の圧力を境界値とする境界積分方程式を用いた.境界積分方程式は,要素内一定値をとる形状関数によって離散化を行った.開発手法の検証として,無限領域内に存在する散乱体による入射波の散乱解析を行った.ただし,無限領域,散乱体ともに同種の材料を用いた.この様な条件では散乱波は発生せず,全波動場は入射波による波動場と一致する.そのため,境界要素法による解析で得られる全波動場の値は入射波による波動場の値に一致する.この問題を解くことで,本手法の妥当性を確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,異方性飽和多孔質弾性体の3次元波動問題に対する周波数領域基本解の導出とそれを用いた周波数領域境界要素法の開発を行った.両項目とも既に検証を行っており,研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,異方性飽和多孔質弾性体と等方線形弾性体の連成問題に対する周波数領域境界要素法の開発とその応用を目的とする.これらの目的を達成するため,以下に示す手順で研究を実施する. はじめに,異方性飽和多孔質弾性体と等方線形弾性体の連成問題に対する周波数領域境界要素法の開発を行う.ここでは,平成26年度に開発した異方性飽和多孔質弾性体の3次元波動問題に対する境界要素法に用いた境界積分方程式と等方線形弾性体の3次元波動問題に対する境界積分方程式を連立して解くことで,これらの媒質を対象とした連成問題の解析を行う. 開発した連成問題の解析手法の応用として,破砕帯を含む岩盤内部の波動解析に本手法を適用する.この解析では,破砕帯を異方性飽和多孔質弾性体,その周辺岩盤を等方性弾性体によってモデル化し,発破による弾性波の伝播と散乱の様子を確認する.このとき,周辺岩盤と破砕帯の界面で生じる散乱波や破砕帯内部での多重反射波の特性を,材料定数や破砕対の形状と関連付けて考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は繰越金が発生しているが,これは,当初投稿予定であった論文の投稿および参加予定であった学会への参加を見送ったことが原因である.
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次年度使用額の使用計画 |
この費用は平成27年度の論文投稿費と別の学会への参加費,東京工業大学のスーパーコンピュータTSUBAMEの利用料金に充てる予定である.
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