平成27年度は,前年度に開発を行った異方性飽和多孔質弾性体に対する境界要素法をもとに,異方性飽和多孔質弾性体と等方弾性体の連成問題のための境界要素法の開発を行った.開発を行った連成解析手法では,飽和多孔質弾性体の固体骨格部の変位と間隙流体の圧力,弾性体の変位を未知量とする定式化を用いた.はじめに,両媒質の界面における条件から,波動の反射・屈折の特性を把握し,等方弾性体から異方性飽和多孔質弾性体へ入射する波動の屈折角を求めた.その後,開発を行った境界要素法を用いて,その屈折波の再現を試みた.開発手法を用いた波動解析により,異方性飽和多孔質弾性体内部と等方弾性体との界面における波動のモード変換や,界面近傍における間隙流体の圧力変動を確認した.当初は,具体的な適用例として破砕帯を有する岩盤の波動解析に本手法を適用する計画であったが,波動の反射・屈折およびモード変換に関して,既往の研究のみでは十分な知見が得られていないと判断し,それらを得ることに重点を置いた研究を実施した. 従来の波動解析では,異方性の影響と分散・散逸性の影響は個別に取り扱われることが多かった.本研究は,これらの性質を同時に取り扱うことのできる力学モデルである異方性飽和多孔質弾性体を用いた.異方性飽和多孔質弾性体を用いることにより,波動の位相速度およびQ値の周波数依存性および方向依存性を同時に取り扱うことができ,岩盤のより詳細な波動解析が可能となった.なお,本解析手法の定式化に用いられている物理量は,いずれも計測可能であり,実問題への適用も十分に可能であると考えられる.
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