2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震後に観測された柏崎市における粘性土地盤の沈下は,地震から8年が経過しようやく沈下が収まりつつある.本研究では,粘性土地盤の地震時,地震後の変形挙動を正しく評価し,地震後の粘性土地盤の長期沈下挙動メカニズムを明確にすること,消雪のための地下水位利用が及ぼす地震後の沈下挙動の加速化・長期化への影響を解明することを目的とする.これらの目的を達成した後に,粘性土地盤の長期沈下挙動が与える構造物基礎(直接基礎・群杭基礎(直杭・斜杭))への影響度合いを把握する.以上の目的を達成することで,長期的な圧密沈下挙動の解明と粘性土地盤上の構造物の地震時・地震後挙動を投影する上での現行設計基準の課題を抽出する. 上記設定目標に対し,(1)現地調査およびサンプリング資料に対する室内試験の追加実施により,高密度で精緻な地盤パラメータを取得し,解析結果の精度向上につなげた.その結果,地盤の構造が地震動により低下させられることにより,上載圧に耐えられなくなった深層部の粘性土で圧密が進展することなど,地震後地盤沈下メカニズムを数値解析により表現することができた.(2)塑性軟化圧縮現象に着目し,高位構造を有する粘性土地盤に対し種々の条件下において繰返し三軸試験および遠心模型実験を実施した結果,構造を有する粘性土は,初期剛性が高く液状化強度も大きくなるが,ある閾値以上の大きなせん断応力履歴が加わると,せん断ひずみが急激に進展する脆性的な挙動を示すこと,繰返しせん断後の再圧密過程において圧密排水が収束するまでに長時間を要するが,構造を有する粘性土は「土の構造の低位下」による圧縮軟化現象により,さらに長期化すること,構造を有する粘性土は構造のない粘性土と比べて動的圧縮指数が大きく,構造の程度(せん断前の初期間隙比の大きさ)や累積せん断ひずみ量と相関が高いことを示した.
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