前年度までに実施した振動台実験では,剛な側壁を有する土槽を用いていたため,せん断変形を抑制しており,表層凍結時の地盤挙動を正確に再現していたとは言い難い状況にあった.そこで,最終年度は,表層凍結状態における地盤挙動を明らかにするため,せん断土槽を用いて振動台実験を実施した. せん断土槽を用いて実施した表層凍結状態での一連の振動台実験により,以下の知見を得た. ①未凍結状態では,加振終了直後に過剰間隙水圧は消散しているが,表層凍結状態では0ではない正の値に収束し,表層凍土が融解するまで水圧が残留する.これは,加振により未凍土層で液状化が発生し過剰間隙水圧が発生したが,表層の凍土の存在によって非排水状態となっており,水圧が消散できなかったためと考えられる.②表層凍結状態では,過剰間隙水圧比が1より大きな値で液状化が発生する.表層凍結状態における最大過剰間隙水圧から加振後に残留した水圧を差し引くと,有効応力と等しくなることから,過剰間隙水圧が有効応力を上回る原因は,表層凍土の存在により密閉した空間で未凍土の沈下による水圧が発生するためと考えられる.③表層凍結状態,未凍結状態において同程度の入力加速度で比較すると,表層凍結状態の方が未凍結状態の時と比べて液状化に至るまでの繰り返し載荷回数が実験を実施した全ての入力加速度で大きくなっており,表層凍結状態の場合,液状化が発生しにくくなっていることが示唆された.
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