研究課題/領域番号 |
26820202
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水谷 英朗 京都大学, 防災研究所, 助教 (00636756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 河口砂州 / 河口の地形変化 / 富田川 |
研究実績の概要 |
本研究では,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性の関係性を明らかにするため,和歌山県南部を流下する富田川を対象河川とし,河川下流域および河口域について河床地形や粒度構成等の現地計測を実施している。河口域において高頻度で詳細な地形計測を実施し,河口砂州地形の短期的な発達・消失と,河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究している。RTK-GNSSを利用した歩行地形計測とGPS機能付き測深器を利用したゴムボートおよび観測船による水面下の地形測量により,海域・河口域および河川下流域の地形について水面下と陸上域において途切れなく連続的な地形データを取得した。高頻度に現地計測することが短期的なスケールの現象を捉えるためには重要であるため,本研究を遂行するにあたって安価で低労力化された地形計測手法を選択し現地計測体制を初年度で構築している。本年度は当初の計画通りに,初年度で環境を構築及び実施した河口域の現地計測を継続し,昨年度に引き続き台風来襲前後の現地計測結果から台風がもたらす河口砂州地形に与える影響について現地計測データの分析から現象を捉えることができた。また,本年度は現地計測に加えて河川,河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んだ。地形変化モデリングの核となる流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築した。砂粒群の移動過程を代表砂粒の移動で模擬する簡易ラグランジュ型解法であるため,オイラー型解法に比べて計算負荷が大きい。計算負荷は個別要素法等の対象領域の全砂粒を計算する手法よりは計算負荷が小さいが,実用化を考え並列計算手法の導入にも取り組み,新たな流砂計算手法の検証計算を本研究で計測した現地データを用いて実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度(初年度)では,安全で低労力のため高頻度に現地に出向くことが可能なRTK-GNSS測量とGPS機能付き測深器・ゴムボート等を利用した現地計測環境と実施体制を構築し,和歌山県富田川河口域の現地計測を実施することができた。そして,平成27年度は当初の計画通り,初年度の現地計測を継続し,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性を明らかにする貴重な現地データを蓄積することができた。加えて,河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んでいる。地形変化モデリングの核となる掃流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築し,砂粒群の移動・堆積の運搬過程のモデル化に新たな手法を提案することが出来た。ただ,計算負荷が従来のオイラー型解法に比べ大幅に増大したため,今後の解析モデルの統合化や実務現場での利用を見据え,並列計算手法の導入や計算手法の簡易化にも取り組み,現地データを用いた検証計算を実施しているため,当初計画には含まれない内容に多くの時間を割いている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,これまでの現地計測で得られた貴重なデータを検証材料に用い,河川,河口および河口に接続する海域の地形変化を予測する河床変動モデルおよび海浜流・海浜変形モデルを統合化した解析モデルの開発に取り組む計画である。本研究のモデル開発の基本的なコンセプトは,河川下流域の土砂動態および上述した河口砂州の変化過程を河川域と海域の隔てなく解析することにあり,風と波の影響を考慮した海浜流と漂砂による河口砂州地形予測モデルに,河川の流れ・土砂移動とそれに伴う粒度分布変化を詳細に解析するモデルを導入することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,まず,初年度(平成26年度)の研究成果が学会発表する水準に達していなかった部分があり,本年度渡航となる国際会議への出張を減らしたため,その分,旅費,論文別刷り費等が発生しなかったことがあげられる。その他は,概ね当初の予定通り執行している。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,現地計測に掛かる消耗品やデータバックアップ等のための物品費,RTK-GNSS測量通信費用として平成28年度に合わせて使用する計画とし,そして,学会への参加のための旅費に使用すること,国際論文投稿に向けた英文校閲費や投稿料として使用することを計画している。
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