本研究では,河川下流域の土砂動態と河口砂州地形の変動特性の関係性を明らかにするため,和歌山県南部を流下する富田川を対象河川とし,河川下流域および河口域について河床地形や粒度構成等の現地計測を行った。河口域において高頻度で詳細な地形計測を実施し,河口砂州地形の短期的な発達・消失と,河道の土砂流下特性の関係性を実証的に追究している。RTK-GNSSを利用した歩行地形計測とGPS機能付き測深器を利用したゴムボートおよび観測船による水面下の地形測量により,海域・河口域および河川下流域の地形について水面下と陸上域において途切れなく連続的な地形データを取得することができた。高頻度に現地計測することが短期的なスケールの現象を捉えるためには重要であるため,本研究を遂行するにあたって安価で低労力化された地形計測手法を選択し現地計測体制を初年度で構築し,2年度目においても当初の計画通りに河口域の現地計測を継続し,台風来襲前後の現地計測結果から台風がもたらす河口砂州地形に与える影響について現地計測データの分析から現象を捉えることができた。また,現地計測に加えて河川及び河口域の地形変化を予測するための数値解析モデルの構築に取り組んだ。地形変化モデリングの核となる流砂の計算手法に,従来のオイラー型解法ではなくラグランジュ型解法を導入した実河川適用型の地形変化モデルを構築した。砂粒群の移動過程を代表砂粒の移動で模擬する新たな簡易ラグランジュ型解法を提案した。最終年度については,いくつかの現地計測の実施と,開発した地形変化モデル等の本研究の成果を国際会議等で発表し,さらには解析モデルの実用化を考え並列化計算手法を導入し,計測した現地データを用いて検証を進めることができた。
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