本研究の目的は,都市エリアの交通状態・性能を巨視的に表す「Macroscopic Fundamental Diagram (MFD)」(エリア平均密度と平均交通量の関数関係)を,よりミクロなネットワーク交通流特性と結びつけて解析する方法論を構築することである.そして,提案手法によりMFDの容量や渋滞領域の形状を特徴付ける要素・メカニズムを解明する.具体的な研究手順は以下の3つのステップからなる:(1) 渋滞パターンとMFDを結びつける逆解解析手法の開発;(2) 提案手法の感度分析によるMFDの特性分析;(3) 日本の主要都市のMFD特性の実証分析.
最終年度にあたる平成27年度では,平成26年度に完了した上記 (1) で導出したMFDの解析的評価式の感度分析を進め,1起点多終点ネットワークのMFDの渋滞領域が以下のメカニズムにより発現することを理論的に明らかにした:(a) 終点ノードへの渋滞延伸によるトリップ完了フローのブロッキング,(b) 異なる終点を持つフローによる渋滞リンク容量の奪い合い.一方で,多起点1終点ネットワークでは上記のようなメカニズムが働かないことをいくつかの例,数値実験により示した.このことから,MFDの渋滞領域発現には異なる終点を持つフローの相互作用が重要であることがわかった.
一方,(3) では,仙台市,京都市,那覇市,東京都,首都高の道路網におけるMFDの実証分析を長期間データを用いて行った.その結果,MFDの渋滞領域が道路網上の渋滞パターンと対応関係があること(理論解析の前提の妥当性確認),MFDの渋滞領域における平均交通量レベルが渋滞延伸数と負の比例関係にあること,が明らかになった.また,詳細な渋滞パターンの分析より,MFDの渋滞領域発現時に上記 (a) のブロッキング現象が生じているという示唆が得られた.また,各道路網のMFDの特徴も分析した.
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