研究課題/領域番号 |
26820220
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中谷 隼 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40436522)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リサイクル / LCA / 環境産業連関分析 / ハイブリッド分析 / 分別行動 / 食品廃棄物 / 容器包装廃棄物 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする食品廃棄物や容器包装廃棄物には複数のリサイクル手法が存在し,多くの上流産業と関わっている。そのため,これらの廃棄物のリサイクルによる環境負荷削減効果を分析するためには,既存の国内産業や輸入原料を含めたサプライチェーン全体を対象とした分析が求められる。また,消費者行動である家庭における廃棄物の分別行動もリサイクルのサプライチェーンを構成する重要な要素であり,これらを組み込んだ分析モデルの構築が求められている。サプライチェーン全体を対象とした環境負荷分析には,EIOA(環境産業連関分析)が有効であるが,従来の方法では,消費者行動が最終需要としてしか扱われていない,輸入量の大きい財では誤差が大きい,リユースとリサイクルの効果を十分に記述できないといった限界があった。 こうした背景から,本研究の初年度は,LCAとEIOAをベースとしたリサイクル効果を評価するための環境負荷分析の方法論を確立することに集中した。具体的には,LCAのプロセスデータと産業連関表を接続する,ハイブリッド分析(Integrated Hybrid Analysis)の枠組みを適用した。ここでは,リサイクル効果への影響が大きい輸入原料などの環境負荷に関する情報を必要に応じて補うことで,データ収集やモデル構築の規模の面からの実現可能性を維持しつつ,より正確にリサイクル効果を算定できるモデルを構築した。さらに,食品廃棄物と容器包装廃棄物を含む食のサプライチェーンを対象として,構築した枠組みによってリサイクルによる環境負荷削減効果を評価することで,分析方法の妥当性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,初年度に計画していた消費者行動分析のアンケート調査は,実施が先送りとなっている。その理由は,当初の研究計画では既存の手法によって容易に達成できると見込んでいたリサイクルの環境負荷分析に関して,ハイブリッド分析を用いた手法の構築に予想以上の時間を費やしたためである。その一方で,リサイクル効果の評価方法の構築という面からは,当初の見込みを上回る成果が得られている。そのため,最終的な研究目的に対する達成度は,総合的に判断して「おおむね順調に進展」と言うことができる。
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今後の研究の推進方策 |
まず,廃棄物の分別行動を含む消費者行動を分析するためのアンケート調査を実施する。ここでは,コンジョイント分析を用いた調査票を設計し,オンライン調査サービスを利用して調査を実施する。得られたアンケート調査の結果をもとに,様々な入力条件(環境情報の提供や経済的インセンティブの付与など)に対する消費者の行動間の選択割合の変化や,それに伴う波及的な行動変化の割合を定量的に分析する。 さらに,必要に応じて小売業の協力のもとでサプライチェーンの実態調査を行い,初年度に構築した環境負荷分析の方法論によって,評価対象とする製品のサプライチェーン(リサイクルを含む)の環境負荷を評価する。 以上の分析・評価結果に基づき,様々な入力条件に対する環境負荷の帰結を評価し,3R行動促進のアクション(環境情報の提供や経済的インセンティブの付与など)による波及的な影響も含めた環境負荷の低減効果を定量化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に計画していた(初年度の支出計画の大半を占めていた)消費者行動分析のアンケート調査は,調査計画の検討が不十分であることから実施が先送りとなった。その理由は,当初の研究計画では既存の手法によって容易に達成できると見込んでいたリサイクルの環境負荷分析に関して,ハイブリッド分析を用いた手法の構築に予想以上の時間を費やしたためである。それに伴い,環境負荷分析に関する研究発表のために参加を予定していた国内学会も,参加および研究発表を繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
初年度に計画されていた,廃棄物の分別行動を含む消費者行動を分析するためのアンケート調査を実施する。ここでは,コンジョイント分析を用いた調査票を設計し,オンライン調査サービスを利用して,評価対象(食品廃棄物,容器包装廃棄物)ごとに1回または2回の調査を実施する。また,初年度の研究成果(環境負荷分析の枠組みの構築)の発表のために,国内学会に参加する。
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