研究実績の概要 |
前年度までに,環境試料中のノロウイルスの遺伝子配列を解析し,特に検出頻度の高かったGII.3及びGII.17型について390ベース程度の配列を基にプラスミドDNAを作成した. 本年度はデータベース上のノロウイルスの遺伝子配列について,各遺伝子型をカバーするよう,750配列程度を取得し,GII.3型,GII.17型及び長期に渡り重篤な胃腸炎症状を多数引き起こしているGII.4型のそれぞれに特異的なTaqManプローブを設計した.さらに,プラスミドDNA及び設計したTaqManプローブを用い,各遺伝子型のノロウイルスについて,デジタルPCRによる定量タイピング手法を検討した. デジタルPCRによる定量タイピングにおいては,TaqManプローブとして,遺伝子群 (GII) を網羅的に検出可能なもの (網羅的プローブ) と遺伝子型に特異的なもの (特異プローブ) を同時に用いた.両プローブはそれぞれ異なる蛍光色素で標識し,判別可能とした.デジタルPCRにおいて,遺伝子増幅条件の最適化を試みた結果,プラスミドDNAが高濃度 (10,000 copies程度以上) 存在する場合には網羅プローブ,特異プローブの両者ともに,期待値通りの測定値が得られた.一方で,低濃度域では測定値と期待値に差異が生じた.さらに,遺伝子を添加しないネガティブコントロール系において偽陽性が生じた.なお,本検出系をReal-time PCRに供した場合は,10 copies/reaction程度の低濃度域においても期待値通りの結果が得られた.これらより,本研究で設計した遺伝子検出系はデジタルPCRによる低濃度ウイルスの検出には適さないことが示唆された.今後はさらなる検出系の最適化を試み,測定感度の向上を試みる必要がある.
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