本研究は、日常生活圏における地上到達紫外線量の実態と空間構成の因果関係を明らかにし、人体への環境負荷低減に向けた地上到達紫外線分布図の作成と屋外空間の計画手法の開発を目的とするものである。平成27年度には、高分解能衛星画像とローカルリモートセンシング技術であるUAVを用いた精緻な3次元地形モデルを作成した。加えて、緑陰の抽出が課題である中、DSMとDEMの差分から緑地における樹木の抽出を可能とし、高精細な紫外線分布図の作成手法を開発した。最終年度である平成28年度は、紫外線に対する市民の意識調査と本研究で作成された紫外線分布図に対する評価を目的として、アンケート調査を実施した。結果として以下の3点が明らかとなった。 1)紫外線に関心がある人は非常に多いが、環境省が刊行している紫外線保健指導マニュアルについては大部分の回答者が「知らない」と回答するとともに、「詳しい内容まで知っている」と答えた人は一人もおらず、ほとんど知られていないことがわかった。 2)日常の紫外線対策について「必ずしている」または「たまにしている」を選択した回答者は紫外線に関心があると答えた回答者数より少なく、紫外線には高い関心がある一方で、あまり対策は行っていない人の存在が明らかとなった。以上より、紫外線への関心はあるが正しい知識を持っておらず、効果的な対策を行えていないことがわかった。 3)気象庁の紫外線情報を確認することによって、その日の行動を変更すると答えた回答者は全体の39%であるのに対し、本研究で作成した紫外線分布図を利用したいと答えたのは全体の58%であった。高解像度な紫外線分布図によって紫外線の危険箇所が正確な位置として認識されたことが原因として挙げられ、また、その用途としては『目的地までのルート選択として活用したい』との回答が最も多いことが把握された。
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