本研究では、下水処理において高効率・省エネルギー型の新規窒素除去プロセスとして注目される嫌気性アンモニア酸化(Anammox)プロセスの実用化に向けた研究で、次世代シーケンサーを用いて、これまでAnammox細菌の存在が確認されていない環境にも焦点を当て、未知のAnammox細菌の探索を試みつつ、地球温暖化抑制型のリアクター構築を目指したN2O分解触媒搭載型環境負荷低減Anammoxリアクターの開発を目指すものである。本研究では、次世代シーケンサーを用い、様々な環境から、Anammox細菌の検出、同定を行った。実験に供した試料は、下水処理場活性汚泥(標準活性汚泥法、修正Berdenpho法、MBR法、OD法、高度OD法)、下水処理場メタン発酵槽消化汚泥、富栄養化型湖沼底質、ダム貯水池水塊、窒素飽和した渓流河川底質、畜産排水が畑を介して混入していると思われるアンモニア性窒素濃度が非常に高い河川底質、水田土壌、蓮田土壌等である。その結果、海洋性のAnammox細菌として知られるCandidatus Scalinduaが0.06%-2.0%検出された。最も多く検出されたのは、富栄養化湖底質で、次いで、窒素飽和渓流底質、アンモニア性窒素が非常に高い河川底質であった。また、高度処理OD法を除く下水処理場汚泥からの検出は非常に少なかった。また、Anammoxリアクターの運転条件が微生物群集に与える影響を調査した結果、約10日間、流入を止め、運転を完全に止めた後の微生物群集構成と大量のポリマーが混入し、処理性が悪化した時の微生物群集構成は比較的類似していることが確かめられた。Anammox細菌が属すPlanctomycetesは全体の2.7%-25.8%を占めたが、興味深いことに、運転を停止しているときの方が存在割合は高かった。
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