研究課題/領域番号 |
26820228
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小山 毅 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50572608)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 津波荷重 / サージ力 / 数値流体解析 / 円柱 / 構造・流体連成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,水理模型実験及び数値計算を通して陸上遡上津波のサージフロント(津波先端端部)が建築構造物に衝突した際に及ぼす衝撃的外力を評価する手法を確立することである.
本年度は,津波サージが固有周期が有限である構造物に衝突した際に生じる弾性応答を,オリフィス付貯水型水路を用いて評価するための実験を行った.サージ力は,有限な立ち上がりを有するステップ外力のように構造物に作用するため,立ち上がり時間と構造物固有周期の比で応答は変化する.構造物として,1自由度系としてモデル化可能な,荷重検出部が有限幅の壁から構成される計測システム(3分力計(現有)使用)を用い,壁の材質や幅を変えることで周期を変化させた.流体の影響で構造物には付加慣性および水力減衰によって付加減衰が生じ,浸水深の増加とともに固有振動数の低下及び減衰係数の増加が見られることが明らかになった.
また,前年度の有限幅の板に続き,円柱形状を有する構造物に作用するサージ力を評価するための実験を行った.短時間で作用するサージ力を計測するために,前年度同様に引張圧縮荷重計(前年度購入)を2個並列配置した荷重計測システムを用いて,直径の異なる2つの円筒に作用するサージ力を計測し,高速度カメラ(前年度購入)によってその流況を観察した.浸水深に比べて構造物の直径を比較的大きくすることで,受圧面のアスペクト比を小さくし,実際の構造物と津波を想定した状況を模擬した.サージの円柱への衝突現象は,既往研究における円柱の水面衝突を取り扱うスラミング現象に類似はしているが,受圧面のアスペクト比が小さい場合は自由境界面の影響で力が低減されることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標通り,固有周期が有限である構造物にサージ力が作用する時の弾性応答への影響因子を明らかにした.既往研究と異り,サージ力が作用することによって発生する付加慣性や付加減衰に関して定量的に評価を行った. また,受圧面アスペクト比が小さい円柱形状の構造物に作用するサージ力の評価も行い,自由境界面の存在により,円柱のスラミング現象に関係する既往研究よりサージ力が低減されることが明らかとなった.
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今後の研究の推進方策 |
流体・構造物を連成させた数値流体解析により,水理実験の再現可能性,有効な数値計算モデル等を検討し,実大スケールでの解析を行う.
前年度検討した乱流計算モデルを用いて,数値流体解析プログラムOpenFOAMによる構造体を簡易連続体としてモデル化した弱・強連成解析を行い,今年度行った実験結果と比較し,付加慣性や付加減衰の再現性や影響を検討する.その後,構造物を連続体からより構造体の実状を反映した部材モデルに置換し,各部に生じる応力・変位等の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(平成27年)の使用額(直接経費)に残額(約87万円)が生じた理由は次の通りである.(1) 投稿予定論文2編の登載の遅延のため(搭載料金30万円),(2)予定国内学会への不参加(旅費10万円),(3) 大型並列計算機使用料をやむをえず別予算にて支払ったため(使用料25万円),(4) 購入予定であった,ひずみ計測ユニット Keyence NR-ST04が現有のもので代替できたため(単価20万円)
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成28年)請求助成金(直接経費)と合わせた助成金総額(約127万円)の支払計画概要は次の通りである.(1) 論文3編の搭載料金(45万円),(2) 学会参加旅費 (10万円),(3) 大型並列計算機使用料(25万円),(4)流体・構造連成解析用の汎用有限要素解析プログラムABAQUS使用料(45万円).
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