研究実績の概要 |
本研究課題では、変形能力の大きい筋かい耐力壁の開発が最終目的である。そのためには、筋かいに曲げ座屈が発生した後も、破断せずに耐力を維持できるような性能を有していることが望ましい。そこで、筋かいに用いる材料を選択するための試験を行い、その構造性能の詳細な検討を行うことが初年度の目的である。 初年度は、LVLを対象とした圧縮試験を行い、座屈強度の評価手法、変形性能の確認などを検討した。使用した樹種は、カラマツ、ヒノキ、スギである。使用したLVLの日本農林規格による等級は、カラマツでは1OOE、ヒノキでは80E、スギでは60Eのものとした。また、筋かいで使うことを想定しているため、断面の大きさは45×90mmの一種類とした。この材料を用いて、様々な長さの試験体を切り出し、それらを用いた圧縮試験を行った。短柱の縦圧縮試験を材料定数を得るための目的として行い、それより長いものは座屈強度の評価を行うための圧縮試験とした。圧縮試験では、細長比50,60,70,80,100,130,150,190の8種類の細長比を選択した。それぞれの細長比に対して3~4体の試験を行った。 試験の結果より、材料ごとの降伏ひずみの定義、その降伏ひずみを用いた塑性座屈強度の定義、およびそれらの強度に対する座屈強度の評価式の定式化を行った。それにより、限界細長比は3樹種とも100と定めることができた。細長比が100以上の範囲では、弾性座屈が発生しており、その場合はオイラーの座屈強度式を用いることで、座屈強度の評価が可能であることが分かった。また、細長比が100を下回る範囲では、塑性座屈が発生しており、その場合はテトマイヤーの方法を用いることで、座屈強度の評価が可能であることが分かった。また、すべての樹種において、降伏ひずみの2倍にあたる曲げ変形までは、曲げ破断をしないという傾向が得られた。
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