本研究の目的は、変形能力の大きい筋かい耐力壁の開発である。 筋かい材に曲げ座屈が発生した後、耐力が一定になり、変形がその後大きくなり、その変形が筋かい耐力壁の変形能力には比例関係が見られ、筋かい材の変形能力が大きく寄与しているということが前年度までの検討で明らかとした。最終年度である2016年度は、これまでの実績を考慮し、壁の長さが1820mm(以後、2P耐力壁)と2730mm(以後、3P耐力壁)の筋かい耐力壁の水平加力試験を行った。筋かい材として、カラマツの単板積層材を用いた。前年度までの検討は壁の長さが910mm(以後、1P耐力壁)であったため、その考え方の拡張することが最終年度の課題であった。 最終年度の実験において、2P耐力壁では、筋かいの降伏ひずみが1.5倍になると、水平変位の倍率はおおよそ1.5倍であった。また、降伏ひずみが2.0倍になると水平変位の倍率は2.34~2.64倍であった。3P耐力壁では、降伏ひずみが1.5倍になると、水平変位の倍率は1.6~1.9倍であった、また、降伏ひずみが2.0倍になると、水平変位は2.55倍であった。2P耐力壁と3P耐力壁において、降伏耐力時の1.5倍の変形までは、ひずみ量と変形量に高い比例関係があることが分かった。それより大きい範囲では比例の度合いが若干小さくなる傾向が見られた。しかしながら、ひずみが2倍になったときに、変位量は2倍を超えているため、想定よりも大きな変形性能をもっていることが分かった。想定よりも変形能力が小さいことは設計上危険側の評価となるが、本検討の結果は安全側に評価である。 最終年度までの検討を通して、変形能力が高い筋かい材の選定を行い、それをもとに変形能力の高い筋かい耐力壁を提案すると共に、そのメカニズムの解明と、その変形能力の推定方法を提案することができた。以上が、本研究の最終成果である。
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